研究課題/領域番号 |
24520315
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
佐藤 アヤ子 明治学院大学, 経済学部, 教授 (70139468)
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キーワード | Margaret Atwood / The Year of the Flood / MaddAddam / 新ディストピア小説 / カナダ文学 / 日本カナダ文学会 / Alice Munro / ALECC |
研究概要 |
Margaret Atwoodは、21世紀初頭からMaddAddamの三部作を発表してきた。その第二作目、The Year of the Flood(岩波書店より刊行予定)の翻訳を終え、現在、推敲作業を行っている。さらに、2013年秋に出版された三部作の最終作であるMaddAddamの翻訳依頼(岩波書店)を受け、翻訳準備中である。 アトウッドは〈言葉のマジシャン〉と言われている。この翻訳作業は、一言一句に込めた作者の意図を推し量るうえにも大変役立っている。また、作者アトウッド氏と随時連絡を取り、貴重なアドバイスを頂いている。作者の本書に込めた意図を知るうえで、本研究に大変役立っている。 2014年3月、British Columbia大学のEva-Marie Kroller教授を訪ね、MaddAddamの三部作について意見交換をし、貴重な意見を頂いた。Kroller教授は、The Cambridge History of Canadian Literatureの編著者であり、本書の翻訳作業を日本カナダ文学会のメンバーたちと行っている。本書にはアトウッド文学に関する論文も多く、貴重な情報を得ることができた。 Association for Literature, Environment and Culture in Canada (ALECC) Conference 2014 (2014年8月、Lakehead University, Thunder Bay, Canada)の“MaddAddam Trilogy”ラウンドテーブル・セッションに討論者として参加することが決定した。 昨年2013年10月、Alice Munroがノーベル文学賞を受賞。カナダでは初めてのノーベル文学賞受賞である。朝日、読売、東京等の各紙より、アトウッド文学と比較した記事の依頼を受け、執筆した。いずれも好評であった。カナダ文学は日本ではまだ多くの読者を得ていないのが現状である。記事は、日本の読者へのカナダ文学への誘いとなったのではないだろうか。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①長編小説The Year of the Floodの翻訳作業は、読書だけでは得られない、深い解釈を得ることができた。 ②Association for Literature, Environment and Culture in Canada (ALECC) Conferenceに討論者として招聘されたことは、本研究が認められたことであり、世界のアトウッド研究者たちと最高の意見交換ができのは、今後の本研究に大いに役立つと期待している。
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今後の研究の推進方策 |
①The Year of the Floodの校正・出版、及びMaddAddamの翻訳開始する。 ②Association for Literature, Environment and Culture in Canada (ALECC) Conference 2014で、“MaddAddam Trilogy”について発表予定。パネラーたちとの意見交換は今後の研究に有意義と期待する。 ③日本アメリカ文学会主催の2014年10月の大会に、「カナダらしさを求めて―アメリカの影響からの脱却」のシンポジウムのパネラーとして参加予定。アトウッドは、カナダ文学批評のカノンとも言える自著Survival: A Themantic Guide to Canadian Literratureで、カナダ文学には脈々と続く独自のアイデンティティがあることを示した。それは、「生き残ること」。カナダ文学のテーマ的な手本を示すことによって、アトウッドはカナダ文学の存在認識を本書で求めている。この「生き残り」のテーマが、アトウッドの最近作〈MaddAddam〉の三部作にも踏襲されているいることを発表する。 ④上記2つの発表をもとに、「カナダ文学にみる環境テーマ~M.アトウッドが希求する〈新ディストピア小説〉」の論文執筆にとりかかる。
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次年度の研究費の使用計画 |
The University of Reading名誉教授でアトウッド文学研究の第一人者であるCoral Ann Howells氏を訪問し、インタヴュー、及び意見交換を行う予定であったが、校務のため渡英ができなかった。 Coral Ann Howells氏をロンドンに訪れ、インタビュー、及び意見交換のための旅費に充てる。
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