アメリカ南部文学に顕著な傾向を「釈明の衝動」という語で表現し、自伝をその優勢な形式として挙げたFred HobsonのTell About the South(1983)の成果を踏まえ、こうした文学を産出してきた南部社会に働く力学をその文化的風土の歴史的特徴へと辿りつつ、特に「私」の来し方を説き語る文学が、その「私」の所属する社会にまつわる公的な言説から直接由来している点に着目、南部文学における「公・私」の連結という特徴をより前景化するため、両者の分裂、文学言説の私化、公的領域からの撤退を特徴とする近代日本に支配的な文学形式「私小説」との比較考察を行なった。
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