研究課題/領域番号 |
24520321
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
委文 光太郎 麻布大学, 獣医学部, 准教授 (70367241)
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キーワード | トロロプ / 『北アメリカ』 / 旅行記 |
研究概要 |
本研究の目的は、鋭い観察眼で上流階級の有様をつぶさに描いたアントニー・トロロプの数ある作品の中でも、これまで研究対象とされることの少なかった4つの旅行記に焦点をあてて、その全体像を提示することにある。 研究の2年目にあたる本年は、昨年度に一旦書き上げたトロロプの2作目となる旅行記『北アメリカ』(1862)に関する論文を、国際著作権問題という観点から考察し直した上で、大幅な書き換えをおこなった。 この問題への取り組みに関してはチャールズ・ディケンズが有名であるが、実はトロロプも国際著作権問題の解決に向け、長年にわたり熱心な活動を展開していた。そこで、この問題に初めて言及した『北アメリカ』、1866年に書かれた国際著作権法に関する彼の論文、複数の手紙、さらに『自伝』(1883)を取り上げて、国際著作権問題に対する彼の考えを時系列に沿って考察した。その結果、批判対象となっていた米国の政治家の姿に変化が見られたり、当初は責任の一端を負わせていた米国国民を後に称賛したりというように、彼の発言内容の一部が修正されてはいたものの、英米両国にとって国際著作権法は必要不可欠であるという彼の信念は、揺るぎないものであったことが明らかとなった。これまでのところ、トロロプの国際著作権問題への取り組みを長期的な視点に立って論じたものはないため、こうした事実は彼の人物像を理解する上で重要なものと言える。そこで、この研究成果を「トロロプと国際著作権問題」(『英米文化』第44号)として論文にまとめ投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に書き上げた論文を、再度、別の視点から考察し直して、大幅な書き換えをおこなったため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、今年度に終了予定であったトロロプの旅行記『西インド諸島とカリブ海沿岸地域』(1859)に関する論文を書き上げた上で、『オーストラリアとニュージーランド』(1873)の自筆原稿の閲覧と分析をおこなう。そして、最終年度となる2015年度は、『南アフリカ』(1878)を取り上げて、自筆原稿ならびにメモの閲覧と分析をおこない、4つの旅行記全体に通底するトロロプの人種観や政治思想を考察する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨今の急激な円安により、申請書作成時の想定よりも今年度の旅費がかさんでしまった。そのため、前倒しの支払いを請求し、結果的に次年度使用額が生じた。 本年度は英国の2つの都市を訪問したが、次年度はトロロプの旅行記『オーストラリアとニュージーランド』の自筆原稿が所蔵されているオーストラリア国立図書館のみの滞在を予定している。
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