本研究は、イギリスのヴィクトリア時代において顕著になった「信仰活性」の動向について、主に小説を中心とする文学と絵画および建築を中心とする芸術の双方向から、これらの活動が社会に対して与えていた影響について考察するものである。今年度は、文学における「信仰活性」の動きについては、小説において「宣教(ミッション)」がどのように描かれているのかを中心に、19世紀のイギリスにおける動向について特に注目して調査・分析を行った。また、芸術においては、近代イギリスの芸術文化において、どのように「信仰活性」の動きが現れているのかについての考察を行った。 具体的には、研究代表者(向井秀忠)は、個人的な研究会においてシャーロット・ブロンテの『ジェイン・エア』で描かれるセント・ジョン・リヴァーズの人物像と、彼の言動が表象する当時の宣教活動の意味合いについて報告し、そのときの議論を元に論文にまとめ、その成果として、2016年7月刊行予定の研究書『帝国と文化(仮)』に寄稿した。研究分担者(近藤存志)は、トマス・ハーディの『日陰者ジュード』おける建築描写が、当時の様式論争を通して「信仰活性」の動きを表象していることを指摘し、北米ヴィクトリア研究学会(NAVSA)において研究発表を行った後、これを元に論文にまとめた。
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