研究課題/領域番号 |
24520324
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋経済大学 |
研究代表者 |
川津 雅江 名古屋経済大学, 法学部, 教授 (30278387)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 英文学 / 西洋古典 / セクシュアリティ / ジェンダー |
研究概要 |
本年度は、19世紀初期における女性のセクシュアリティの商業化の実態を解明するという本研究の基盤を築くことに重きを置いた。 ①本研究に必要不可欠な古典文学の18-19世紀英訳版や女性詩人の著作集や評論などを収集し、分析・解読したものをデータベース化して検索可能なかたちに変え、今後の研究が容易になるよう計った。国内で収集が困難な19世紀初期のThe Literary Gazette, The Blackwood's Edinburgh Magazine, Frazer’s Magazine for Town and Countryなどの雑誌やThe Bijou, The Keepsake, The Friendship’s Offeringなどのアニュアルやギフトブックについては、夏期休暇中に大英図書館にて海外調査をおこなった。 ②10月のイギリス・ロマン派学会において、「愛の商品化-レティシア・エリザベス・ランドンと L. E. L. と「サッポー」」のタイトルで、Letitia Elizabeth Landonがいかに文学市場で異性愛者としてのSapphoを売り出すことによって人気を博したのかを論じた。また、12月のイギリス女性史研究会のシンポジウム「揺らぐ境界-セクシュアリティとジェンダー」では、「ロマン主義時代における女性同士の愛、ジェンダー、セクシュアリティ」のタイトルで、脱性化の傾向があったロマン主義時代における女性間の愛の表象を歴史的観点から考察し、歴史・社会学など他分野の研究者たちと意見を交換した。その他、ロマン主義時代における古典文学の受容やジェンダー・感受性観などの点において本研究に関連する研究成果として、日本ジョンソン協会のシンポジウムにおいて口頭発表をおこなうとともに、二点の論文を紀要と共著で公表した。 ③本研究のウェブサイトを作成し、資料を公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度実施計画事項のうち、William Gifford, Thomas Mooreなどによる英訳文献の分析と、古典文学の英訳とも関わりがあると推定される Benthamの“Essay on ‘Paederasty’”(1785), Shelleyの “Discourse on the Manners of the Antient Greeks Relative to the Subject of Love”の考察はまだ終了していないが、それ以外は予定通りに研究が進んでいる。特にLeticia Elizabeth Landonの作品分析に関しては、平成25年度から実施する予定であったが、計画を前倒しにして実行し、すでに一つの成果をあげた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、これまでの研究を基盤としながら、本研究の独創的な視点の意義を模索しつつ研究を進め、最終年度での総括の礎を築く。 ①基本的資料・文献・刊行物をより一層充実させるとともに、最新のジェンダー・セクシュアリティ研究動向・成果を含む資料・文献・刊行物を追加し、平成24年度よりもさらに精力的に、収集した資料の精読・分析・解読に取り組み、それらをデータベース化して、研究が容易になるようにする。 ②前年度に完了しなかったWilliam Gifford, Thomas Mooreなどによって英訳された古典文献の分析、Benthamの“Essay on ‘Paederasty’” (1785), Shelleyの “Discourse on the Manners of the Antient Greeks Relative to the Subject of Love”を考察し、古典文学の受容と当時のセクシュアリティ観の関係を解明する。またLandonの前年度に考察した詩以外の作品やFelicia Hemansの作品の分析・解読にじっくり取り組み、19世紀初期の女性詩人の商業的成功の野望とセクシュアリティの言説の関連を検証する。 ③研究成果に関しては、学術誌への投稿論文や大学紀要掲載の論文、共著などの形で、随時公表する。 ④平成24年度に作成したウェブサイトに、本研究に関連する資料を逐次追加する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する予定の研究費としては利息残金の28円がある。従って、平成25年度の研究費は28円と直接経費600,000円の合計600,028円である。平成25年度はLandonやHemans のテクストの分析・解読にじっくり取り組むために、研究費全体のうち、19世紀初期女性作家関連、出版事情関連、ジェンダー・セクシュアリティ関連の書籍購入費として、物品費に330,028円をあてる。また、国内の学会での発表や図書館での調査のための旅費に、100,000円、人件費・謝金(HP更新費と英文論文校閲費として)に、70,000円、その他の支出(論文印刷費、複写費、相互貸借文献複写費および郵送費として)に100,000円を使用する予定である。
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