研究課題/領域番号 |
24520327
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
白川 恵子 同志社大学, 文学部, 准教授 (10388035)
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研究分担者 |
林 以知郎 同志社大学, 文学部, 教授 (90097858)
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キーワード | アメリカ / 共和政期 / アンテベラム期 / 独立革命 / 組織的反乱事件 / 黒人奴隷 / 海洋ロマンス / 環大西洋 |
研究概要 |
本研究は、アメリカ建国期前後から南北戦争以前期における民衆の組織的反乱や抵抗精神の発露に関して、文学的、文化的、政治的な視座から、総括的な影響関係を探ることを目的としている。初年度の、おもに資料収集による研究の文献整備と周辺領域の考察に続き、研究二年目の2013年度は、いくつかの具体的な成果を発表した。 具体的に、白川は、①昨年に引き続き、2013年8月に、ニューヨーク、コネチカット、ボストン、ケンブリッジで資料収集をすると同時に、Prof. David D. Hall, Prof. Larzer Ziffらと交流した。なお、Prof. Hallとは、同年11月、来日時の上智大学での初期アメリカ学会の講演においても再会し交流した。②昨年度PCA/ACA(ワシントンDC)で口頭発表した内容を、"Passing as a Native American Celebrity"としてまとめ、出版した。③マット・ジョンソンの『ピム』について、多民族学会全国大会にて口頭発表を行った。④Sharon E. FosterのThe Resurrection of Nat Turnerに関して、The National Association of Afirican American Studiesの年次大会にて口頭発表を行った(Baton Rogue, LA)。⑤Michael T. Gilmore, The War on Wordsの書評が『英文学研究』に掲載された。⑥『アメリカ文化55のキーワード』において「詐欺師」「通信販売システム」「遊園地」の項目を執筆し、出版した。 また林は、①前年年度より進行させてきたJames Fenimore Cooperの難解な長編の海洋ロマンス群(nautical romance)の読解を進め、②学内の発表会において、研究報告を行った。③さらに、そのうちの成果の一部を2014年度刊行予定の共著『災害の物語学』、中良子編(京都:世界思想社、2014)に論文「難船体験とアメリカとの遭遇」としてまとめ、2014年5月の刊行を待つ状態にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年同様、資料収集および、研究成果の発表や出版に関しては、かなり順調であると言えるだろう。ただし、本件研究が本来的に考察課題と定めていた内容に対して、派生テーマの広がりが想定以上に大きく、中心課題として想定していた具体的事象の考察・発表になかなか到達できずにいるのもまた事実である。申請時に構想していた内容が、広がり、様々に敷衍しつつ、恐らくは他所での取り扱いがないであろうテクストを発掘・紹介し、考察の上、成果を出せることは、嬉しい誤算であるものの、研究完了期間にも目配りをしつつ、コア課題でも、目に見える形の成果を上げることを目指したい。
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今後の研究の推進方策 |
すでに資料収集の大方のところは、ほぼ終わっているので、白川、林ともに、今後は、引き続き、地道な資料の読み込みと分析、執筆作業となる。 白川は、進捗状況にあるマット・ジョンソンの『ピム』の執筆完了と、NY Conspiracyに関する口頭発表にむけて、歴史的背景の整理と複数の文学テクストの読解、また、可能であれば、その合間に、Higginsonのテクストに関する考察も入れる。 林は、前年度に引き続き、James Fenimore Cooperの海洋ロマンス群を中心に環太平洋的視野のもとでこのジャンルの相互干渉・往還の動態を探る研究を進捗させることで、形成期アメリカ小説がはらむイデオロギー性を剔出する作業を展開させる。林は、既に複数の海洋譚に関する論考があるので、これらを整理して単著とすることも目指す。
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