研究課題/領域番号 |
24520327
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
白川 恵子 同志社大学, 文学部, 准教授 (10388035)
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研究分担者 |
林 以知郎 同志社大学, 文学部, 教授 (90097858)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 初期アメリカ / 共和政期 / アンテベラム期 / 組織的反乱 / 体制転覆 / 黒人奴隷 / 海洋ロマンス / 独立革命 |
研究実績の概要 |
本研究は、アメリカ建国期の前後から南北戦争以前期(Early AmericaからAntebellum Americaまで)における民衆の組織的反乱や抵抗精神の生成と発露に関して、文学的、文化的、社会政治的な視座から、包括的な影響関係を探ることを目的としている。初年度の資料収集と文献整理と読解(2012年度)、二年目の資料収集と海外研究者との交流および研究発表は執筆(2013年度)に続き、三年目にあたる2014年度についても、いくつかの具体的な成果を挙げた。ここに概要と合わせて記す。
白川は、① 初期アメリカの体制反乱事件の一例であるニューヨーク奴隷陰謀事件について、引き続き考察し、その過程で、国内外での複数の口頭発表を行った。②また「アメリカン・ルネサンスにおける情動と身体」(竹内プロジェクト)において、アンテベラム・ニューヨークの煽情物語と反乱についてを関連づける講演を行った。③奴隷制・奴隷反乱関連文学作品について共著および論文を執筆し、出版した。④現在、こうした研究の蓄積と成果をさらに発展的に敷衍させ、新たなトピック(a. 建国期の某スキャンダルからみる大衆転覆的想像力、b. 民衆の組織的反乱と物語化等)についても、考察中である。
林は、①かねてより進行させてきたJames Fenimore Cooperの難解な長編海洋ロマンス群の読解と分析を継続中である。②なお、その成果の発表が決定しており、近く、活字化される予定である。最終的に、Cooper作品に関しての単著執筆を目指している。本場アメリカでも批評的に黙殺されてきた作品群に対する論考は、国内外への大きな貢献となることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料収集や、読解・分析およびその成果発表については、一定以上の成果をあげている。その意味においては、「当初の計画以上に進展している」と考えてもよい。ただし、本件研究が措定する考察範囲が広範で、新たなテクストや事象を発見・発掘するたびに、多くの派生的なトピックが生じてくるため、研究対象が敷衍的に拡散したこともまた事実である。従って、上記の自己評価としているものの、「初期アメリカにおける体制反乱事件とその文化的・文学的影響」に含まれうる、未紹介の事象については、今後も積極的に取り上げつつ、研究修了期間までに、まとまりのある総体としての構築を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の研究完成年に向けて、引き続き、資料の分析および口頭、執筆による成果発表を続ける。
白川は、①NY奴隷反乱事件の口頭発表の成果を論文としてまとめ、②建国期の某スキャンダル事件についての考察を口頭と執筆により発表し、③最終年度としての、これまでに全ての論文・論考を包括的・相対的に成果報告書としてまとめる。
林は、①ここ数年の研究成果をCooperの海洋ロマンス群を中心に文字化し、②このジャンルでの、相互干渉・往還の動態を探る研究を進捗させつつ、形成期あまりか小説がはらむイデオロギー性を剔出する論考群を世に問う。③また、研究最終年にあたり、これまでの複数の海洋譚に関する論考を総括してまとめる。
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