本研究では、エリザベス朝イングランドにおける騎士道ロマンスのリバイバルに着目し、この中世伝来の文学様式が大衆劇場、印刷出版、宮廷祝祭や都市祝祭という多様なメディアを媒介として発展・変容する過程を文化史的視点から考察した。特に、近代初期イングランドにおける市民文化の成熟を背景として、騎士道ロマンスが階級的かつ地理的に拡散する現象を明らかにした。また、騎士道ロマンスの伝統的なモチーフや主題が改変され、様々な共同体の理念や理想を反映させるために新たな意味づけが付与される中で、騎士道ロマンスが他の文学ジャンルには見られない文化的持続性や混淆性を獲得するに至った過程を跡づけた。
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