研究課題/領域番号 |
24520330
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
秋元 孝文 甲南大学, 文学部, 教授 (70330404)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アメリカ文学 |
研究概要 |
各論のひとつとして執筆していたメルヴィルの「バートルビー」論を甲南大学紀要に「複製への抵抗:Bartlebyと貨幣、そして解釈」として発表。「バートルビー」において事務所の同僚たちがバートルビーの決まり文句を複製、コピーするのに対してバートルビーが「意志の無」の穴蔵から出て抵抗する場面を起点に、作品内で主人公たちがする業務である書類の「複製」や、もともと複製でしか存在しえないメディアである貨幣、さらには応答を拒否するバートルビーの抵抗じたいが作品の構造に複製され、それが読者と作品の間の関係にも複製されている点を論じた。 Great Gatsby論のためのリサーチに着手。作品での消費行為と時間の関係性、「過去を取り戻す」ギャツビーと(いわば未来の時間を前借りする商売である)債権を売るニックとの対比について考える。2013年度中に学会発表し、のちに学会誌に投稿の予定。 並行してJack LondonについてのリサーチのためGlen EllenおよびOaklandを訪問。The Assassination Bureau Ltd.というロンドンが未完のまま残した小説を、その出自(もともとのプロットはSinclair Lewisがロンドンに売ったものである)とできあがった作品(遺稿を仕上げたのはRobert L. Fishという別の作家である)が作者ロンドン以外の手によるものだという点から、著者性の問題、そして作品内の金によって人の命を奪うという貨幣の問題をからめて論ずる予定。Jack London Museumなどを中心に伝記的な背景のリサーチを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
形として出版されたのは「バートルビー」論のみであるが、次の各論への土台作りのためのリサーチができたことが収穫だと思う。
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今後の研究の推進方策 |
今年度中に『ギャツビー論』をまとめ、秋の英文学会九州支部シンポジウムで口頭発表ののちいずれかの学会誌に投稿の予定。そのリサーチのために夏季休暇を利用してシカゴのNewburry Libraryで資料収集。Jack London論については同時進行でリサーチを進めていくが、その前に次の各論であるCatch 22論に取り掛かる。同時進行で進めて先に完成したものから発表していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
夏に『ギャツビー論』のリサーチのためにシカゴのNewburry Libraryを訪問するための旅費が必要。Gatsby論、Catch 22論、それぞれの執筆のための資料、書籍を購入の予定。リサーチに使用するためのラップトップコンピュータや資料保存のためのデジタルカメラなども購入の予定。 昨年度に計画していたNew YorkのMuseum of American Financeでのリサーチができなかったため未使用額が発生しているが、今年度末、3月に本施設を訪問しリサーチを行う予定である。
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