研究課題/領域番号 |
24520331
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 西南学院大学 |
研究代表者 |
河原 真也 西南学院大学, 文学部, 准教授 (80454924)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アイルランド |
研究概要 |
本年度はイースター蜂起に関する史的事実の確認とその社会的背景の検証が主たる実績となった。具体的には、近年公開された軍事資料から明らかになりつつあるイースター蜂起の実態を、Charles Townsend の_Easter 1916: The Irish Rebellion_ (2005)をはじめとする歴史関連の文献に基づき、その概要をおさえた。また、事件への客観的理解を行うことを目的に、アイルランドの中等学校や大学で使用されている歴史教科書や参考書の記述に基づく、イースター蜂起へのアイルランドでの客観的理解を確認するに至った。これらの検証によって、この武装闘争における、Thomas ClarkeやEamon de Valeraら事件にかかわった人物たちの行動がアイルランド自由国成立後の社会おいて、一部神格化されていた事実が確認できたと言えよう。さらに、20世紀初頭のアイルランドが抱えていた社会問題を考察するうえで、J. M. Syngeの作品を活用し、当時の文化ナショナリズムの諸相を探りながら、イースター蜂起に至る当時の社会状況について考察を加えた。(それぞれ研究発表と論集出版という形で、研究成果を公開した。) 資料収集のために行ったアイルランド出張(2012年8月)では、1960年代におけるイースター蜂起理解に関する書籍を複数入手することができ、今後本格的に取り組んでいく、1960年代の小説における事件表象との関連性が確認できた。日本国内でも検索可能な、20世紀初頭の軍事データベースに関する情報も得ることができたことも付記しておく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定であったイースター蜂起の概要を把握するという目的については、予定していた資料以外に、アイルランド出張時に入手した古書やアイルランド史の教科書、および参考書によって事件の概要を把握することができ、それなりの研究成果を得られたと言えよう。一方で、事件の背景やその当時の世論を探るということを目的に、20世紀初頭の定期刊行物から探るという課題については、資料の閲覧場所が限定されるため(図書館のマイクロフィルム利用)、思った以上に苦戦を強いられている。学内の役職就任により、校務が増えたことも一因であるが、今後はオンライン・データベースなどの、自宅や研究室からアクセス可能な手段による調査の比重を増やすことも視野に入れる必要があると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
イースター蜂起の概要を歴史的研究書によって確認したが、さらなる事実を掘り起こすべく、20世紀初頭に刊行された_The Leader_をはじめとする定期刊行物や、オンラインによって検索できるデータベースを活用しながら、当時の世論や事件の事実関係を検証していく。また本年度からは、事件を扱った小説をいくつか精読し、そこに現れた事件の表象と、出版された時期の社会背景を考察する作業も併せて行う予定である。 なお、2013年6月下旬にアイルランドへ出張し、1913年~1916年のアイルランドにおける文化表象を考察する学会に参加することで、事件への新たな視点を獲得すると同時に、かねてより交流のあるUniveristy College Dublinの研究者から、これまでの研究成果と今後の方向性について助言を得る予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
6月下旬にアイルランドで開催される学会出席と資料収集を兼ねた出張を行うため、申請時した旅費の全額をその出張に使用する予定である。物品費としては、20世紀のアイルランド史やイースター蜂起に関する書籍を多数購入する。
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