ドイツ近現代文学の展開を「聖書詩学」の系譜として辿った。その際に、修辞学の観点から「予型論」的な比喩形象、即ち時代を越えた形象の呼応に注目し、同じ形象の発現を通時的に辿る形で跡づけていった。比喩形相の呼応は、作家・詩人の目的論的な意識(本研究はこれを「神義論的思考」と名付けた)によって導かれるが、「世俗化された」現代の宗教批判においても、生の意味の追求として同じ意識が働いている。本研究では、知識社会学を援用し、そのような意識が生まれて形作られる過程を「詩的主体」の確立として系譜的に跡づけた。その際、文体論的に作品の語り手人称に注目し、「詩的『私』」の発語形成として追求した。
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