本研究は、ミュージアムという公共啓蒙空間が18世紀に成立すると同時に消え去った蒐集キャビネットであるクンストカマーが18世紀末のドイツ・ロマン派の時代の思想家・文学者によって再受容されたことの意義を解明したものである。 ミュージアムという制度は、近代科学の成立と軌を一にしていた。それに対してクンストカマーはそれ以前の、ルネサンス・バロック時代にヨーロッパの各地に見られた蒐集キャビネットである。その分類方法はミュージアムのものとは根本から異なり、世界・宇宙を表象するものであった。 クンストカマーがドイツ・ロマン派の時代に再受容された背景は、彼らの近代に対する批判があったことを明らかにした。
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