研究課題/領域番号 |
24520340
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
鈴木 正美 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (10326621)
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キーワード | 外国文学 / 芸術諸学 / 比較文学 / 芸術史 / 非公式芸術 / ロシア / 前衛音楽 / 現代詩 |
研究概要 |
1.研究会の開催 平成25年度に研究会を4回開催した(2013年5月18日、8月31日、2014年1月24日、1月25日)。報告者と報告タイトルは次の通りである。鈴木正美「モスクワ最新動向2013」および「アルハンゲリスク・ジャズ祭 1991──記録映像とソ連解体前夜のジャズ回顧」、大井弘子(ビバボ人形劇)「オブラスツォーフとの出会い」および「人形劇団カラバスとロシア・東欧の人形劇」、スヴェトラーナ・グヌチコヴァ(国立アカデミー中央人形劇場付属劇人形博物館)「人形劇博物館におけるさまざまな仕事と特徴について」および「国立アカデミー中央人形劇場と日本」。また、2014年3月22日-23日、モスクワにおいて研究協力者のアレクサンドル・ベリャーエフおよびミハイル・スホーチンと研究打ち合わせを行い、情報交換をした。 2.海外における現地調査 鈴木正美は2014年3月19日ー24日にモスクワに滞在し、資料(書籍、音源、映像)を調査・収集した。さらにこの間に、現代アートセンター「ガレージ」、モスクワ現代美術館、文化センター「ドム」等で非公式芸術に関する展覧会を実見し、資料収集を行った。また、オブラスツォーフ国立アカデミー中央人形劇場付属劇人形博物館では人形劇団カラバスおよび大井数雄に関する資料を調査し、450点の資料(写真・書簡のコピー)を収集した。さらに、彫刻家ラザーリ・ガダーエフのアトリエでの調査を通じ、彼の子息である詩人コンスタンチン・ラザーリと知己を得たことで、現代詩に関する新たな知見を得ることができたのは大きな収穫であった。研究協力者の大井弘子も2013年5-6月の2ヶ月間、国立アカデミー中央人形劇場で研究調査を行った。 3.研究成果の公開 鈴木正美は当該テーマに関わる1本の論文を発表した。その他の研究成果は研究代表者のホームページにおいて順次公開している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、ソ連邦崩壊前後のロシアにおけるアンダーグラウンド芸術がどのように変化、変質、進化したかを明らかにすることにある。そこで、これまで主に行ったことは、このアンダーグラウンド芸術に関わった芸術家、音楽家などに現地で聞き取り調査を行い、彼らから資料を得ることであった。今回も研究協力者のスホーチン、レートフ、ベリャーエフ、ドミートリエヴァ、コストローヴァおよびジャズ評論家のキリル・モシュコウの協力もあり、貴重な資料を多数入手することができた。 新たに研究協力者に加わったアレクサンドル・ベリャーエフの紹介で彫刻家ラザーリ・ガダーエフのアトリエを訪問したことで、さらに新たな資料を入手できただけでなく、彼の子息で詩人のコンスタンチン・ガダーエフと知己を得たことで、ロシアの現代詩に関する貴重な情報を得ることができたのは大きな収穫だった。 当該研究に関わる資料(書籍、論文、音源、画像、映像)は順調に収集しており、画家のイリーナ・ザトゥロフスカヤや上記のモシュコウ、ガダーエフのように研究に協力してくれるロシア人がさらに増えたことで、今後の資料収集・調査がますます容易になることが期待できる。 現在ウラジーミル・タラーソフの自伝『トリオ』を翻訳中で、今年度出版の予定だったが延期し、平成26年度中に出版の予定である。これにより現代ロシアの非公式芸術、前衛音楽、アンダーグラウンド文化の一端が明らかになることは間違いない。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の核となる(1)非公式芸術と公式芸術の分離と融合(担当:鈴木正美、ミハイル・スホーチン、リュドミーラ・ドミートリエヴァ)、(2)ジャズ・ロック・カルチャーの進化と変容(担当:岡島豊樹、セルゲイ・レートフ、アンタナス・ギュスティス、アレクサンドル・ベリャーエフ)、(3)人形劇の変化と人形美術の誕生(担当:大井弘子、吉原深和子、ナターリヤ・コストローヴァ)、という3つのテーマごとに研究グループをつくり、それぞれの領域で研究を行う。 9月には鈴木正美がモスクワとヴィリニュスでスホーチン、レートフ、ギュスティス、ベリャーエフの協力のもとに、存命する非公式芸術家たちへの聞き取り調査、資料収集を行う。研究協力者の吉原深和子も同時期にモスクワでコストローヴァの協力のもと現地調査を行う。年度内に本研究プロジェクト参加者による研究報告会を3回開催し、各人の相互理解を深める。さらに現地調査での具体的な調査内容を再検討する。海外研究協力者とは電子メールによって討議を重ね、現地調査に関しても意見交換をし、調査におけるさまざまなコーディネートを依頼する。ここで、お互いの問題点や課題を確認し、研究の進め方について調整する。その結果を見て、各グループは必要に応じて個別の研究会を開き、研究をさらに進めていく。 以上の研究をもとに、平成27年2月には本研究プロジェクト参加者(レートフも日本に招へいする)による研究会・シンポジウムを開催し、研究の総括を行う。これをもとに平成27年度以降の新たな研究の計画の基礎を固める。研究成果は研究代表者のホームページにて公開する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度中に手続きした物品および旅費の支払いが、平成25年度中に終了していないため。 平成26年4月中に支払が完了する予定である。
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