研究実績の概要 |
本研究は、『百科全書』研究における研究基盤となる本文校訂をその中核としてきた。本文研究は近年進み、その実態は少しずつ明らかになりつつあるが、未解明のまま残された部分は多い。本研究の主たる目的は、特にその中でも材源研究に焦点を定め、本文内で明示化されていない「黙示的典拠」の特定とその解釈を系統的かつ包括的に行うことにあった。具体的には、ディドロの執筆項目を取り上げ、材源に対する執筆者の引用手法や意図を比較し解析していくことにより、『百科全書』本文の生成過程の多様性を総合的に記述しようとするものであった。研究期間に、代表者は、『百科全書』本文項目の典拠研究を世界に先駆けて開始することにより、先行文献群の組織的な本文への取り込みの様態を実証し、これまでの調査で解明されていなかった、大規模な未知の資料群の層を初めて発見した。これらの資料群と本文項目を照合させ、両者の相関性の特徴を解明したのである。その成果は、2017年に刊行したTatsuo HEMMI, Lecture critiques de Diderot et de l'Encyclopedie. Genese, Dynamique et Contexte, NUUS, Niigata, 2016. [235p.]を始め国内外の国際シンポジウム、学術書・学術誌において発表・刊行された。また、国際ディドロ学会、フランス18世紀学会等の紀要誌における「18世紀学研究の今日の総括と展望」特集などに代表的研究として紹介され(2014)、またフランスを代表する学術文庫シリーズで刊行された『ディドロ百科全書本文選集 』(ガリマール社Folio Classique,2015)にも、代表者の研究は引用された。
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