研究課題/領域番号 |
24520344
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
鎌田 隆行 信州大学, 人文学部, 准教授 (30436985)
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キーワード | バルザック / フランス文学 / 十九世紀小説 / 生成論 |
研究概要 |
1.バルザック『セザール・ビロトー』およびこれと緊密な関係を持つ同時期の作品について関連書籍や資料を広く参照し、テクストの成立のクロノロジカルな諸段階や刊行の経緯、またとりわけ当時の受容の状況について情報の整理を行なった。また、生成論全般についての資料収集を行い、最新の調査方法論の進展を確認した。 2.フランス学士院図書館ロヴァンジュール文庫で『セザール・ビロトー』の作品生成資料を参照し、草稿および校正刷りの諸段階を整理し、関連箇所を転写する作業を行なった。また既存の転写版の見直しを行った。 3.2の調査記録をもとに同作品の生成過程の分析を行ない、研究ノートを作成し、また論文の準備を進めた。『セザール・ビロトー』が元来「哲学研究」の枠組みで構想されながらも、次第に社会風俗の描写が主軸となり、「パリ生活情景」の作品として成立したことをプランの内的構成と出版戦略の両面から検討しながら、『人間喜劇』の多層的な形成を包括的に分析し、論文「バルザックにおける「全集」と「知」」として発表した。 4.『セザール・ビロトー』におけるバルザックの「社会種」の描写の発展の問題に取り組み、同作品における零細金利生活者モリヌー氏の描写が、のちの「金利生活者論」におけるブルジョワ社会の平板さの批判的分析のさきがけになったことを論証する口頭発表「"Monographie du rentier"――バルザックによる「凡庸」の分析」を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バルザック『セザール・ビロトー』の生成資料(草稿、校正刷り、版本)の調査・解読・転写、関連資料の広範な収集が計画通り順調に進み、さらに、『人間喜劇』全体の形成をマクロな観点から辿りなおす作業を進め、個別の資料体におけるミクロな分析と両面からバルザックの作品群の成立を検討することができた。この内容をまとめた論文の刊行により、バルザック生成論の視座を広げていく基礎づくりができた。こうした作業や研究報告の場を通じ、国内外の研究者との意見交換も十分に行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後もこれまでと同様に、『セザール・ビロトー』およびこれと密接な関連を持つ同時代のバルザックの小説作品の生成資料の調査・解読・転写と、関連資料の広範な収集と読解を進め、またフランスや日本国内などのバルザック研究者・19世紀文学研究者と広く情報交換を行っていく。調査によって明らかになった内容は論文としてまとめ、またシンポジウムや研究会などの場にて発表して公開する。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は購入品などにおいて、研究の進捗状況から次年度に購入を回したものがあり、また予定されていた国際研究プロジェクトの会議が行われなかったことから、次年度使用額766,588円が生じた。 26年度は計画にしたがって、図書・資料の購入、分析と論文執筆に必要な機器類の入手を進め、海外および国内の関連資料収蔵先での資料調査および研究集会への参加を予定している。
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