平成25年度には、P・N・メドヴェージェフ子息のユーリー・メドヴェージェフが父親の論文集のための序文として1995年に準備した、P・N・メドヴェージェフの伝記を主とするロシア語組版校正原稿全53ページ(版元の倒産で公刊されずに終わった)の翻訳作業を行ない、本文と注釈とを併せて400字詰め原稿300枚くらいのうち、本文の180枚分を訳了した。 平成26年度には、上記の作業をうけて注釈120枚分の翻訳作業を進め、90枚分を訳了した。この作業のために、日本ロシア文学会関東支部大会(埼玉大学教養部)に参加して、研究者間での情報交換を行なった。また早稲田大学図書館でのロシア語文献調査を3回にわたり行なった。さらに、この作業のために必要なロシア語図書を購入した。3月31日時点で、翻訳原稿全体の半分を印刷冊子にし、わが国のロシア文学研究者および文芸学者を中心に100部を配布した。残りの半分も追って配布の予定である。 平成24年度~26年度の3年間の研究期間全体の成果としては、平成24年9月のロシアへの研究調査出張で、P・N・メドヴェージェフが編集した『巡回劇団ノート』計30号分のうち20号分を、サンクトペテルブルグのロシア国立図書館でコピー入手したこと(残りの10号分は資料劣化のためコピーの許可を得られず)、この資料によって、上記論文集の序文校正原稿を訳出する作業の精度を著しく高めることができた。また序文原稿著者のユーリー・メドヴェージェフ氏と〈バフチン・サークル〉についての研究情報を交換、さらに世界文学研究所研究員でロシア科学アカデミー版ミハイル・バフチン全著作の編集に従事したI・L・ポポーヴァ女史から、研究推進のための数々の助言を得た。そして平成26年度末のメドヴェージェフ伝記校正原稿の邦訳刊行で、バフチン・サークルの著作を研究するための基礎的な資料を提供することができた。
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