研究課題/領域番号 |
24520347
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
西川 智之 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 教授 (20218134)
|
研究分担者 |
古田 香織 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 准教授 (20242795)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 独文学 / 芸術誌 / 世紀転換期 / ユーゲントシュティル / 総合芸術 |
研究概要 |
研究初年度にあたるため、まずは4年間のタイムスケジュールの大きな枠組みを考えた。研究3年目にあたる2014年に、ベルリンのブレーハン美術館の元館長Ingeborg Becker氏を招いて豊田市美術館でシンポジウムを開催することを決め、そのシンポジウムを中心に4年間の研究日程を立てた。平成24年度:主な研究対象の基礎的分析(具体的には次の段落に記載)、平成25年度:研究の中間的な成果発表のためにシンポジウム開催、平成26年度:シンポジウムで成果を発表するとともに研究の課題・問題点を洗い出す、平成27年度前年度のシンポジウムなどを参考に研究を取りまとめ、論文集として最終成果を発表。 次に、今年度の研究について具体的に記す。 <西川>ウィーン分離派は、マスコミなどを利用しながら新しい芸術運動としての自分たちの主張を過激にアピールすると同時に、自分たちの作品の展示館である分離派館を建築するために、周到とも言える準備も行なっていた。『ヴェル・サクルム』創刊号や当時の新聞記事などを手がかりに、ウィーン分離派成立過程における戦略の二面性を明らかにすることができた。そしてその成果について、日本独文学会東海支部冬期研究発表会で「分離派成立前後のウィーン美術界の状況について」というタイトルで研究発表を行った。また、international/ nationalという観点から『ヴェル・サクルム』と『パン』の分析も続けている。 <古田>今年度は、『ユーゲント』の特徴をジャンルというカテゴリーを立てて分析し、それぞれに関わった芸術家たちの表象媒体としての『ユーゲント』と、商業誌媒体としての『ユーゲント』との関係、また、編者であるGeorg Hirthのコンセプトと時代のニーズとがどのように『ユーゲント』に表現されているのかを具体的な図版や文章から分析してきた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、主な研究対象である『ヴェル・サクルム』、『パン』、『ユーゲント』の、創刊号を中心に刊行初期のものの比較・分析を行う計画であったが、それについては「研究実績の概要」にも書いたように、各自が当初の計画通り研究を進めると共に、資料の収集を続けた。 また、世紀転換期の芸術運動の多様な側面について、自分たちの視野・知識を広げるために、研究協力者である井戸田総一郎氏と高橋麻帆氏だけでなく、京都国立近代美術館の池田裕子研究員と和歌山大学千田まや教授ともコンタクトを取り、平成25年度にシンポジウムを行うことを決めた。『Deutsche Kunst und Dekoration』誌や、『Dekorative Kunst』誌、『Simplicissimus』誌などについて、各研究者から異なった観点での分析を披露してもらうことになっている。そのシンポジウムに向けて、西川はinternational/ nationalという観点から『ヴェル・サクルム』と『パン』を中心に研究・分析を続けており、古田は『ユーゲント』に託された編者Georg HirthのコンセプトをHirthの論説の中に探り、それがどのような形で『ユーゲント』に表象されているのか、具体的な図版や文章の分析を進めている。 このように、各自の研究のテーマを絞ると同時に、来年度以降の研究ための具体的な準備も行なっており、初年度としては研究は概ね順調に進んでいると言ってよいと思う。
|
今後の研究の推進方策 |
西川は、平成24年度は、『ヴェル・サクルム』や『パン』の創刊号の巻頭の辞などを比較・分析しそれぞれの雑誌の特徴について考察してきたが、平成25年度以降はそれぞれの雑誌の変化をたどり通時的な観点からの考察を加えることで、研究の深化をはかるつもりである。 様々な芸術誌が台頭しその黄金期を迎える1890年前後から1900年頃の芸術誌の特徴を探るために、古田は『ユーゲント』が芸術誌としての安定した地位を得、また他の芸術誌とは異なる性格を確立するに至る、創刊より20年というスパンで『ユーゲント』の分析を進める予定である。 同時に、研究の幅を広げ、また自分たちの研究に問題点がないか検討するためにも、他の研究者と研究会やシンポジウムを開くことで、自分たちの研究の活性化を図りたい。そのために、平成25年度と平成26年度にシンポジウムを行うための具体的な準備をすでに始めている。 分析対象となる主な資料はインターネット上で公開されているが、当時の新聞など、一部の資料はまだデジタル化されていないので、必要な場合はドイツ、オーストリアに行き資料収集をするつもりである。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、北海道で行われる日本独文学会秋季研究発表会で西川、古田を含め5名のパネリストによるシンポジウムを行うつもりであるが、そのための旅費等で30万円程度が必要になる。またシンポジウムではパワー・ポイントを使っての進行を考えているが、現在使用しているパソコンは古く、最近はフリーズすることもあるので、ラップトップタイプのパソコンを一台購入したい。その費用として20万円ほどが見込まれる。 また文献の収集も引き続き行うつもりであり、そのための費用も20万円ほどを見込んでいる。今のところはドイツ、オーストリアでの資料収集の予定はないので、そのための予算は来年度以降に繰り越す可能性が高いが、今年度の研究中にどうしても必要な資料が出てきた場合は、50万円ほどの費用が必要になるかもしれない。 また、研究データの取りまとめや資料・文献の整理などで、大学院生に協力してもらうつもりであるが、そのための人件費も5万円ほど見込んでいる。
|