研究課題/領域番号 |
24520347
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
西川 智之 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 教授 (20218134)
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研究分担者 |
古田 香織 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 准教授 (20242795)
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キーワード | 独文学 / 芸術誌 / 世紀転換期 / ユーゲント・シュティール / 総合芸術 |
研究概要 |
研究代表者である西川は『ヴェル・サクルム』と『パン』を中心にinternational/nationalという観点から考察を加えた。『パン』も『ヴェル・サクルム』も、特に創刊号では、ヨーロッパ各地からの新しい芸術を積極的に取り入れようとする姿勢が見える一方で、他国に負けぬ自国の芸術を育成しなければならないという主張も顕著である。しかし混在するinternationalな側面とnationalな側面とは、決して相反するものではなく、進展する産業化社会と密接に関係していたことを、具体例を挙げながら明らかにした 古田は、雑誌『ユーゲント』の商業性・社会性に注目し、芸術誌としてのその多様性について考察を重ねた。『ユーゲント』には、当時の著名な作家や芸術家の作品が掲載される一方で、雑誌の副タイトルが示すように、「生活のための」雑誌でもあった。このように、情報提供媒体としての性格をあわせもった『ユーゲント』という雑誌の特性を、編集者のゲオルク・ヒルトのコンセプトと関連づけながら研究を行った。 このように、研究者各自がそれぞれの担当する芸術誌について独自の観点からの研究を続ける一方で、西川は平成25年9月には、3名の研究協力者に加わってもらい、「世紀転換期ドイツ語圏の芸術誌の諸相―その多様性の根底にあるものは何か」というタイトルで、日本独文学会秋季研究発表会において、シンポジウムを行った。19世紀末から20世紀初頭のいくつかの芸術誌を、それぞれの発表者が違った観点から取り上げることで、当時の芸術運動の多様性を浮き彫りにすることができた。 また、ベルリン。ウィーン、プラハで、世紀転換期を中心とした資料収集も行い、ベルリンでは、本研究との関係で来日し講演を行ってもらうことになっているインゲボルク・ベッカー氏にお会いして、講演の内容などについての詳しい打ち合わせを行うこともできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、平成25年度は、研究代表者、研究分担者それぞれが、担当する芸術誌の通時的な比較・分析を行うとともに、他の芸術誌についての知識を深め、自分たちの研究の活性化を図るために、他の研究者と研究会を行い、9月に北海道大学で開かれた日本独文学会秋季研究発表会において、「世紀転換期ドイツ語圏の芸術誌の諸相―その多様性の根底にあるものは何か」というタイトルでシンポジウムを行った。その成果は、平成26年度に、日本独文学会より論文集として刊行されることになっている。 一次資料、二次資料の収集も順調に進んでいる。 本研究の事業期間の半分となる2年間が経過したわけだが、他の研究者との研究会などを通じて、自分たちの視野を広げると同時に、研究対象である『ヴェル・サクルム』、『パン』、『ユーゲント』に関しては、研究代表者、研究分担者それぞれの論点の絞り込みを行うこともできた。 また、今年度夏に豊田市美術館で開催するシンポジウムならびにインゲボルク・ベッカー氏の講演会のための準備も着々と行っており、研究は順調に進んでいると言ってよいだろう。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の事業期間としては、あと2年間が残されているが、今年度も引き続き、西川は『ヴェル・サクルム』と『パン』の比較・分析を行い、古田は『ユーゲント』の図版や文章の具体的な分析を進めると同時に、将来的に自分たちの研究の幅を広げるためにも、他の研究者との研究会やシンポジウムの開催により、自分たちの研究の活性化を図りたい。 具体的には、平成26年8月には、豊田市美術館でシンポジウムならびに講演会を開催することになっている。講演者としては、ドイツのブレーハン美術館の前館長インゲボルク・ベッカー氏を招き、ドイツ語圏のユーゲント・シュティールについての講演を行ってもらい、またシンポジウムでは数名の研究者に加わってもらい、ドイツ語圏の芸術誌について、その多様性とその当時の社会との関係などについて明らかにしていきたいと思っている。 本研究の事業最終年度に当たる平成27年度には、前年度のシンポジウムの成果を論文集としてまとめるなど、過去3年間で行った研究の取りまとめを図ると同時に、他の研究者との研究会などを通じて、自分たちの研究の問題点やこれからの課題も洗い出し、本研究終了後の更なる研究につなげていきたい。
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