本研究は、特に『ユーゲント』、『ヴェル・サクルム』、『パン』を中心に、世紀転換期ドイツ語圏の芸術誌を比較・検討することで、世紀転換期の芸術運動の特徴を探ってきた。平成27年度は、本研究計画の最終年度にあたるため、これまでの4年間の研究をまとめるとともに、今後の研究の課題を検討した 西川は、これまでの4年間の研究に加え、グスタフ・クリムトのウィーン大学天井画を巡る騒動の際に、『ヴェル・サクルム』がどのような働きをしたのかを、カール・クラウスの『ファッケル』などと対比することで、ウィーン分離派の芸術観を擁護し広めるという『ヴェル・サクルム』の機関誌としての側面を明らかにし、『ヴェル・サクルム』についての今回の研究のまとめを行った。 また、古田はこれまで『ユーゲント』の全体像を浮かび上がらせてきたが、平成27年度は、具体的なテーマ、たとえば『ユーゲント』に見られる女性像やジャポニスムなどについて分析を行い、『ユーゲント』の特徴の具体的な検証を行った。研究成果は、平成28年度には論文の形で公表するつもりである。 本研究では平成26年度に、他の研究者にも協力してもらい、シンポジウムを開催した。平成27年度には、それを論文集として発行する計画であったが、残念ながらそれができなかった。ドイツ語圏の芸術誌を専門とする研究者が集結した貴重な機会であったので、近い将来出版助成などに申請して、ぜひ出版物の形で成果を公表したいと思っている。
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