研究課題/領域番号 |
24520348
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
加藤 靖恵 名古屋大学, 文学研究科, 准教授 (90313725)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | フランス文学 / ゴシック建築 / プルースト / エミール・マール / 生成研究 / 国際情報交換(フランス) |
研究概要 |
本年度は19世紀末から20世紀初頭のフランス文学におけるゴシック建築の描写について、マルセル・プルーストと彼に影響を与えた美術史家のエミール・マールを中心に調査をした。プルーストがマールの著作からの引用をしながら創作した架空の画家の教会建築に関する言説の分析を引き続き行い、シャルトル大聖堂の彫像作品についてこれまで研究者に指摘されていなかった言及がなされていることを発見し、これについてマール以前から今日に至るまでのシャルトル研究に関する資料調査をフランス国立図書館で行い、その分析に基づいて、マール及びプルーストの見地の独自性を探った。 尚、この調査の過程で、フランス学士院図書館のマール草稿資料を閲覧する機会に恵まれた。資料の整理、解読、転写に時間がかかり、また言及されている書籍・論文(ラテン語、ドイツ語も含む)や世界各地の教会の彫刻や壁画等、閲覧するべき二次資料も膨大となることが予測されるが、同時代の文学者にも大きな影響を与えたマールのインスピレーションの源をつきとめる上で貴重な資料であり、こちらも8月、11月の渡仏の折に断片的に調査を行った。 プルースト以外のロマン派、高踏派、象徴主義その他19世紀の作家の作品や美術評論に関する調査も進行中である。 研究のもう一本の柱であるヘレニズムについては、これに関する先行研究の書誌等を利用しながら、閲覧するべき資料を選定、収集を開始している。またゴシック建築受容とからめたテーマ設定をより厳密にするための方向づけを探っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は19世紀フランス文学においてゴシック建築のまつわる描写のデーターベースを集中的に行う予定だったが、データーベース構築の技術的問題が解決できなかったこと、扱う資料が予想以上に多いために、滞っている。特にエミール・マールの草稿の調査も手がけることになり、当初予想していなかった研究の新しい展開が見られる。
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今後の研究の推進方策 |
フランス学士院図書館のマール草稿資料の調査を継続する許可を正式に得ることができた。中世教会建築について先行研究をふまえながらも、詩情あふれる図像解釈を展開して、文学におけるゴシック・リヴァイヴァルとも関係の深いマールの著作の生成研究をさらに続ける。 一方で前年度に調査した19世紀フランス文学におけるゴシック建築への言及について、扱うべき資料の目録を作成するとともに、さらに調査を継続する。 本課題に関して、中高等教育における古典教育、及び中世の文学や芸術に関する教育の変遷を考察することの重要性も痛感する一方である。今後の研究方針を固めることを目標とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
マールの草稿資料の解読にあたって、ドイツ語やラテン語の文献の知識もある美術史専門研究者に情報提供をする必要性が大きい。謝金等を効果的に使用したい。 資料調査は国内の図書館、及びインターネット等で公開されているデジタル資料体を活用するが、現地でのみ閲覧できる古い資料、特に草稿資料の閲覧が必要不可欠であり、今年も年に2、3回のフランスでの調査が必至である。
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