本研究では、18世紀フランスにおける言語論を取り上げ、ルソーを中心としてその思想的文脈に重点を置いて論じた。世紀中葉の思想家たちの多くが身振りや動物的な叫びを言語の起源と見なしたのに対して、ルソーは人間の声は、精神的・道徳的感情の発露であり、言語や音楽の起源であると主張した。また、同時代の思想家たちの多くが文法的な正確さや言語の純化による啓蒙をめざしていたのに対して、ルソーは道徳的な感情を伝える言語を求めた。このようなルソーの言語論は『エミール』などで展開されている彼の人間論と一致するものであり、本研究ではそのような理論的な関係を浮き彫りにした。
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