研究課題/領域番号 |
24520351
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉川 一義 京都大学, 文学研究科, 名誉教授 (30119870)
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キーワード | フランス / プルースト / 失われた時を求めて / 歴史的背景 / 翻訳の注解 |
研究概要 |
本研究は、フランスの作家プルーストの長篇小説『失われた時を求めて』が、どのような政治、社会、文化、言語の背景をもとに成立しているか、そららの事象がどのように本作に取り込まれ、それが作中でどのような機能を果たしているかを解明するため、対象を『失われた時を求めて』にあらわれる政治、社会、文化などへの言及に絞り、その受容と創作への転化を当時の一次資料、作家のメモ帳、草稿帳、校正刷、書簡集など調査にもとづき網羅的に調査し、プルースト小説の独自性と普遍性の秘密を解明することを目的とする。 本年度は、ドレフュス事件をはじめ、さまざまな社会事象、文化的イベント、絵画や音楽などの作品、現実の人物や芸術に想をえた架空の人物や作品などについて。これら現実とフィクションがどのように交錯して複雑な小説空間を形づくっているか、それらの事象が作中でどのような機能を果たしているかを考察した。そうして蓄積された調査結果を見直し、調査の進んだいくつかの分野について研究成果をとりまとめ、それをプルーストにシンポジウムや講演会、専門誌のプルースト特集どで発表し(業績一覧参照)、専門家の批判をあおいだ。また、調査結果を刊行中の『失われた時を求めて』全訳第5巻と第6巻に採り入れ、日本の読者に公開した。 プルーストの政治や文化の受容の背景を明らかにすることにより、従来「創作の秘密」とされてきた作家の現実受容と創造との関係をより実証的に解明する可能性が拓けた。また、これらの研究成果を『失われた時を求めて』全訳の訳文や注解に採り入れることにより、専門研究と一般読者をへだてる壁をとり払い、フランス文学研究の専門的成果を広く日本の読書人に公開することもできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に記載した「研究の目的」は、個別の課題について論文、口頭発表、翻訳の注解やあとがきなどにおいて、おおむね実現することができた。
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今後の研究の推進方策 |
変更の必要を認めないので、今後も従来どおりの方法により研究を推進する。調査の成果の総合的なまとめにも留意しつつ進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた出張が中止になり、支出が計画より少なくなった。 次年度の研究遂行のために使用する。
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