本研究は、18世紀のドイツで出版された子ども雑誌『子どもの友』を主な調査対象として、公共圏つまり印刷メディアを媒介として成立した情報空間と、子どもの関係を明らかにするものであった。子どもたちは、読書-主に、家庭での読み聞かせ-を通じて、識字能力を獲得し、情報空間の中に入り込んでいった。児童文学というジャンルの確立はこの空間において子どもが一定の場所を占めたことの証左である。当時の医学的言説によれば、子どもは病(悪癖)ととらえられており、読書(教育)はその治療行為であった。子どもたちは治療行為としての読書へと駆り立てられることになった。
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