研究課題/領域番号 |
24520355
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松田 浩則 神戸大学, その他の研究科, 教授 (00219445)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ヴァレリー / 初期詩篇 |
研究概要 |
本研究は、ポール・ヴァレリーの初期詩篇の研究を推し進め、それらを翻訳し、注解することを主たる目的としている。フランス本国でも、それらの詩篇はきちんとしたテキスト・クリチックがなされていない状況にあるが、本研究では、今後の研究に耐える校訂版を作成し、それをもとにした翻訳、註解をする予定である。その意味で、平成25年2月にパリのフランス国立図書館でおこなった資料調査はきわめて有意義であった。初期詩篇の草稿、ならびに異稿(ヴァリアント)も合わせて、収集することができた。 詩篇の翻訳にあたっては、まず『旧詩帖』(Album de vers anciens)に焦点をあてて研究を推し進めた。ここには22編の詩が収録されているが、ヴァレリーの主要作品とされる『若きパルク』や『魅惑』とくらべてフランス本土でも研究が遅れているようにおもわれる。日本でも鈴木信太郎による翻訳以降、めぼしい研究がなされていないのが実情である。現段階で、『旧詩帖』に収録されているほぼすべての詩篇の翻訳ができている。この作業のなかで、ヴァレリーの詩作における新たな発見もいくつかあった。そうした発見を論文の形で発表していくつもりである。 今年度は、ヴァレリーにおける書くこと(エクリチュール)と官能との関係からヴァレリーの詩学を読み解くために、論文「ヴァレリーあるいは二匹の蛇」を筑摩書房の『ヴァレリー集成』第6巻に発表するとともに、ヴァレリーの翻訳家としても著名な精神科医・中井久夫のヴァレリーの詩にたいする態度を分析するエッセイ「ヴァレリーを読む中井久夫」をちくま学芸文庫に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フランス国立図書館で平成25年2月に研究課題に関する資料の収集をおこない、課題達成に必要となるものをほぼすべて入手することができた。 これらの資料をもとに、ヴァレリーの初期詩篇の全体像を確認した上で、テキスト・クリチックを行い、個々の詩篇の翻訳、ならびに註解をしていく予定であるが、翻訳作業は順調に進んでいるし、出版社のめどもある程度ついている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年2月にパリのフランス国立図書館で入手した資料をもとに、ヴァレリーの初期詩篇の翻訳、ならびに註解の作業を続けていく。 この研究に必要となる資料のいくつかは、ヴァレリーの生地セットの図書館に保存されているので、それもあわせて収集し、研究をより充実させる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
フランス国立図書館(パリ)ならびにセット市立図書館で2週間程度の資料収集を行う。 日本ヴァレリー研究センター(本部:一橋大学)に集まる研究者たちとの会談のために東京出張を計画している。
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