ベルギーの芸術活動(文学、舞台芸術、映像芸術など)と国家/地域/都市レベル、仏・蘭・独の言語地域横断的な<多層的ナショナリズム>との関係、それらの周縁性や前衛性にも起因する国際性について明らかにする。具体的にはベルギーの神話・伝説・19世紀以来の国民的文学との比較・検討を通し、また作家の領域横断的な芸術活動にも芸術環境・芸術政策の現状を踏まえつつ注目し、多文化共生(芸術家個人の内面的多層性も含む)や伝統と前衛、ナショナリズムと国際性の意味を問い直す。26年度は以下の成果を得た。 1)ベルギー及びフランスにおいてフランス語圏の芸術文化環境(多層性、国際性)を調査、大学などでの文献収集、ルーヴァン・カトリック大学、グルノーブル第3大学、リール第3大学の研究者たちと意見交換を行った。大手前大学文化交流研究所主催のシンポジウム「日仏マンガ文化の適応と浸透」にて講演し、ベルギーとフランスのBD比較を通してベルギー芸術の特殊性を明らかにした。 2)国内外のベルギーをフィールドとする諸分野の研究者たちと意見交換、共同研究会、ワークショップを行った:ベルギー研究会を関西、東京、名古屋にて4回開催した。ブリュッセルで国際研究会を開催し、ブリュッセル自由大学(ULB)、ルーヴァン・カトリック大学(UCL)、王立音楽院などの在ベルギー研究者と意見交換を行った。2016年度日白修好150周年記念の学際的シンポジウムの開催準備として、日本ベルギー学会と協力し「ベルギー学」構築へ向けての意見交換を行った。 3)昨年度出版の『ベルギーとは何か?アイデンティティの多層性』に続く共著『ベルギー研究2―ベルギーを視る』の執筆、編集作業を進めた。ベルギー「幻想文学」短編翻訳集出版への執筆、編集作業を進めた。またベルギー現代作家やベルギーの文学・芸術研究者との共著企画に向けて意見交換を始めた。
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