本研究は100周年を迎えた第一次世界大戦に注目し、それを兵士として体験した作家セリーヌの作品を中心に、その体験の創作する主体への影響を観察し、またその記憶を読者と分有する際に用いられた表現手法、とりわけ詩的ジャンルの影響について分析することを目的とした。2回の研究発表と論文執筆を通して、癒し得ない体験の記憶を表現する手法について論じ、セリーヌ作品におけるジャンル混淆性や叙事詩的な前期作品と叙情詩的後期作品との変化を分析し明らかにした。また本研究にもとづいて市民公開講座を行い、研究成果を広く公にすることができた。
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