研究課題/領域番号 |
24520360
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
坂本 貴志 立教大学, 文学部, 教授 (10314783)
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キーワード | ヘルメス主義 / ピュタゴラス / オルフェウス派 / キルヒャー / ケンブリッジ・プラトニズム / ライプニッツ / 啓蒙主義 / 地母神 |
研究概要 |
本研究は、宇宙論的神学の生成要因を、宇宙論の革命を経験したルネサンス後の思想状況の中に探り、宇宙論的神学の展開をケンブリッジ・プラトニズムの中で分析し、そしてこれを受けたドイツ近代の思想と文学が、新たな宇宙論的神学を形成するときのその具体的様相を明らかにしようとする。今年度は、α(ルネサンス期)に関して、アタナシウス・キルヒャーの「古代神学」を、『エジプトのオイディプス』と『シナ図説』に即して研究し、密教の宇宙観との比較的観点からの考察を、新潟大学で開催されたアタナシウス・キルヒャーシンポジウム(3月)において口頭発表した。β(ケンブリッジ・プラトニズム)に関しては、カドワース『宇宙の真の英知的体系』、ヒューム『自然宗教に関する対話』・『宗教の自然史』を研究し、宇宙論的神学の核心に位置するイシス神を地母神の観点から捉え、これをマリア観音と比較する考究を口頭発表にてヘルダー学会にて行った(6月)。γ(ドイツ近代)に関しては、ライプニッツ『単子論』、ヘルダー『イデーン』、ゲーテとシラーの「古代神学」的関心を研究して、ゲーテ自然科学の集い(6月)と、ヘルダー学会主催の国際シンポジウム「Herder und Japan」(9月)にて口頭発表した。また、研究全体に関する中間的報告を著書『秘教的伝統とドイツ近代-ヘルメス、オルフェウス、ピュタゴラスの文化史的変奏』(ぷねうま舎、2月)において行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度に予定していた研究内容は以下の通りである。 α ジョルダーノ・ブルーノ『無限、宇宙および諸世界について(De L’infinito, universe e mondi)』(1584)において「宇宙論的神学」の生成要因を検討する。β ヒューム『宗教の自然史(The Natural History of Religion)』(1757)『自然宗教に関する対話(Dialogues concerning Natural Religion)』(1779)において、「宇宙論的神学」を支える議論としての、自然宗教ならびに理神論を考察する。γ レッシングの詩と神学的著作を通してその「宇宙論的神学」を明らかにする。 本年度までに全ての対象の研究考察を終えており、研究に関する学会口頭発表を4回行い、著書1冊を発表して、研究計画以上の進展を見ている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に計画していた研究は以下の通りである。 α スピノザの汎神論が、近代における「宇宙論的神学」のプロトタイプとなる可能性を検証する。β ドイツにおいて受容されたウイリアム・ウォーバートンの『モーセの神聖な使命の論証(The divine legation of Moses demonstrated)』(1738)をカドワースの議論の継承者として位置づける。ポープの『人間論(An Essay on Man)』(1733/4)のドイツ語圏における影響を分析する。γ シラー『ドン・カルロス(Don Karlos)』(1787)、ホフマン『磁気催眠術師(Der Magnetiseur)』(1814)における「宇宙論的神学」の様態を明らかにする。 γの研究はすでに先取りして平成25年度に行い、著書にて考察を発表したので、ドイツ近代の文学・哲学に関してはさらに研究対象を広げて「宇宙論的神学」の展開を文献学的に追跡する。また、「宇宙論的神学」の比較検討対象として、地母神そのものを幅広い地理的文化的拡がり(地中海文化圏、アジア文化圏)の中で考究する。そのためのフィールドワークを活発に行う。
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