研究課題/領域番号 |
24520361
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
依岡 隆児 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 教授 (90230846)
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キーワード | 国際情報交換(ドイツ) / 日独文化交流 / ドイツ文学 / 戦争 |
研究概要 |
本研究は日本とドイツの文学の、戦争をめぐる議論・対話について調査し、戦後70年を迎えつつある現在、新しいグローバル社会に即した両国の文学の役割を、それらの間の「対話」に着目して、考察することを目的としていた。このような比較文学的観点から双方向的な対話に着目することは、グローバル化する世界の対しても新しい視点をもたらすこととなると考える。また日本におけるドイツ文学研究や日本文学研究と、ドイツ語圏における日本研究の間に学術的な交流をもたらすことも期待できよう。 そこで、本研究では平成24年度においてギュンター・グラスや大岡昇平ら日本とドイツの作家の間で展開された「対話」を中心に研究してきたことを受けて、平成25年度にはさらに時代をさかのぼり、第二次世界大戦、およびその前にまで視野を広げ、日独の戦争にまつわる「対話」を文学の側面から調査・考察していった。第一次世界大戦におけるドイツ人捕虜たちの残した日本研究や、第二次世界大戦における日独の政治的接近に対してそれぞれの国の作家たちが文学・文化の面で取った態度などを、当時の雑誌や、翻訳刊行された相手国の文学作品を渉猟して、整理していった。当該年度においては、文献調査を主とし、基礎的な作業となったが、これが次年度以降の本課題の展開には欠かせぬ作業だったと考えている。 こうした成果については、大学紀要論文にまとめ、さらに翻訳紹介としてギュンター・グラスの福島原発事故に関するインタヴュー記事「私はよりラジカルになった」を雑誌『文学界』(2月号、2014年)の依頼で解説を付して翻訳し、ドイツの作家が戦後現代の日本に対していかなるスタンスを取っているかを紹介した。また一般向けの講演などでも成果を公けにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「グローバル時代における日独文学の〈対話〉研究」という研究題目で、戦争にまつわるテーマでの対話を中心に研究していくということで、当初は以下の三点を研究の中心に想定していた。①日本とドイツの作家の間で実際に行われた〈対話〉の研究、②両国における戦争に関連して話題となった相手国で刊行された文学作品の受容研究、③最終年の戦後70周年を記念して行う予定の「グローバル時代における戦争をめぐる日独文学の〈対話〉」というシンポジウムの開催、またそのための共同研究と準備 このうち、①の課題については平成24年度ではギュンター・グラスを中心に日本の作家との「対話」を調査・考察し、その成果をシンポジウムで発表し、徳島大学紀要に論文にすることができた。引き続き平成25年度には、①の点についてはギュンター・グラスの福島原発事故に関するインタヴュー記事「私はよりラジカルになった」を雑誌『文学界』(2014年2月号)で翻訳紹介し、原発問題を中心にグローバル化する世界における日本とドイツの関係を追求した。さらに②について明らかにすべく、第二次世界大戦、およびその前にまで遡り、日独の文化交流や戦争協力について、調査・収集した文学作品を整理し、考察していった。 したがって、本研究において当該年度において、概ね順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は日本とドイツの文学の、戦争をめぐる議論・対話を調査し、戦後70年をむかえつつある現在、新しいグローバル社会に即した両国文学の役割を考察することを目的としていた。ともに敗戦国となった日本とドイツが、戦争をめぐる「対話」を展開してきた点に着目し、それをグローバルな視点を検証しながら、両国の国境を超えた文学の協働の可能性を探っていくものだった。 そのため、今後は上記の計画で述べた三点のうち、②の両国における戦争に関連して話題となった相手国で刊行された文学作品の受容研究を継続しながら、③の最終年の戦後70周年を記念して行う予定の「グローバル時代における戦争をめぐる日独文学の〈対話〉」というシンポジウムの開催、またそのための共同研究と準備にも、着手していくつもりである。 年一回のドイツ出張と年数回の国内(東京)出張を行い、関連する機関や図書館(リューベックのギュンター・グラス記念館、ベルリンの国立図書館、東京ドイツ文化センター、ドイツ日本研究所など)においてさらなる調査を行う予定である。成果は学術論文や研究会・学会発表として随時公表していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度には、予定していたドイツ出張が、学内外の公務多忙のため出来なかった。しかしその代わり、国内(東京)出張を増やし、資料調査に時間と労力を割くことができた。ドイツ出張ができなかったために当初の予算が残ってしまい、繰り越し金ができた。 次年度においてはドイツ出張をメインに、積極的な出張を計画し、実践していく。さらに引き続き関連書籍の購入を積極的に図っていく予定である。それゆえ、全体の研究の進展には大きな支障はないと考える。
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