研究課題/領域番号 |
24520362
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
福元 圭太 九州大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (30218953)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | グスターフ・テオドール・フェヒナー / 精神物理学 / フロイト |
研究概要 |
本科学研究費の研究課題は、19世紀ドイツの実証主義的物理学者であり、かつロマン主義的自然哲学者であったグスターフ・テオドール・フェヒナーへいたる一元論的思想の系譜と、フェヒナーが確立した「精神物理学」の後代への影響を、フロイトの無意識の理論ならびにメタ心理学と、ベルクソンの著作に探ろうとするものである。 2012年の夏にオーストリアのウイーンに出張し、フロイト博物館付設の文書館において、フェヒナーとフロイトに関する文献を調査収集することができた。またやはりフェヒナーに影響を受けた物理学者・数学者・哲学者であるエルンスト・マッハや作曲家・指揮者であったグスタフ・マーラーに関する資料も、ウイーンという地の利を活かして収集することができた。 論文については、難解で晦渋なフェヒナーの主著『精神物理学原論』についての論考を日本独文学会西日本支部の学会誌(査読付)に掲載し(福元圭太:「『精神物理学原論』の射程 -フェヒナーにおける自然哲学の自然科学的基盤―」「西日本ドイツ文学」第24号、2012年11月)、この本が思想史的にもつ意義、すなわち本書によってフェヒナーが実験心理学への扉を開いたこと、つまり「心」や「魂」といったものは科学の対象にはなりえないとするカントを論駁したことを明らかにした。 もっとも『精神物理学原論』の射程はさらに、形而上学的で汎神論的‐汎心論的な自然哲学へとつづいており、この側面にこそフェヒナーの特色がよく表れてるとともに、後代への影響力もあったと思われる。精神と物質、心と身体、神と自然の一元論という自然哲学を自然科学的に「実証」しようとしたフェヒナーの思想的営みのきわめて重要な部分を、本年の研究において分析し、論述することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料収集とフェヒナーのテクストの分析、論述に関しては「おおむね順調」であるが、フェヒナーに至る一元論的思想の系譜については、参照しようと考えていたRudolf Eislerの著作『一元論の歴史』(Geschichte des Monismus)の記述があまり参考にならず(思想家、哲学者のテクストからの引用が多いが、書誌情報がなく、学問的に原典までたどることができないという問題がある)、この課題への取り組みの開始がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
上記「現在までの達成度」に記した課題である、一元論的思想の系譜学については、Eisler以外の文献を参照し、フェヒナーへ至る思想史的つながりをトレースする。 また平成25年度は、本課題の申請書ならびに研究計画書に記したとおり、ウイーンで調査収集した文献資料に基づき、フェヒナーのフロイトへの影響を分析する。中心になるのはフロイトの無意識の理論であるが、具体的には『夢判断』(1900年)が対象になる。また「心的エネルギー」「快不快の原則」「恒常性の法則」といったフロイトのメタ心理学的概念の構築においてフェヒナーが果たした役割についても、分析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は主として、国内国外の図書・資料・文献の購入および収集費として使用する予定である。 また国内の学会における成果発表のための旅費、ならびに、掲載料が必要な場合の論文掲載費に使用する予定である。
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