本研究は、亡命ロシア人芸術家アレクセイ・レーミゾフに着目、亡命中の活動全般について、言語芸術と視覚芸術の両面からアプローチし、その特質・全容を明らかにすることを目的としていた。今年度は継続中であった資料収集の一環として、まずコロンビア大学図書館アーカイヴ(ニューヨーク)にて、亡命ロシア関連の資料収集を行った(4月)。とくにレーミゾフ晩年の手稿、亡命ロシア人の展覧会を組織したザレツキイの手稿・書簡、同じく亡命ロシア人で東洋学者のニキーチンの手稿・著書を撮影できたことは、いずれも未出版の資料であることから、意義はたいへん大きい。この成果の一部を下記研究会で報告した(9月、発表標題「雑誌”Chisla"とその周辺」、科研基盤B「20世紀前半の在外ロシア文化研究」2014年度秋季研究会、於:北海道大学)。現在、本研究全体の成果として、パリの亡命ロシア文化に関する著作(『ロシア人たちのパリ』望月恒子との共著)を執筆中である。 ほかに、ロシア文学者・昇曙夢がロシア・モダニズムの日本移入に果たした役割や、彼と亡命ロシア人エリセーエフとの交流について論じたロシア語論文(「「日本の雑誌」とアレクセイ・レーミゾフのカリカチュア」)が、セルビア・スラヴ学研究所発行の学会誌に査読を経て掲載決定しており、27年夏に刊行される。
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