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2013 年度 実施状況報告書

20世紀ドイツ語圏スイス文学における多声性をめぐる研究

研究課題

研究課題/領域番号 24520368
研究機関津田塾大学

研究代表者

新本 史斉  津田塾大学, 学芸学部, 教授 (80262088)

キーワードスイス文学 / 翻訳論 / 探偵小説 / 主体 / 精神医学
研究概要

2013年5月4日ー9日に、スイス、ベルンおよびローザンヌで開催された20カ国の研究者、翻訳者による翻訳ワークショップ<Robert Walser Weltweit>(ローベルト・ヴァルザー・グローバル)に参加し、ローザンヌ大学の公開討論会でパネリストをつとめた。
続いて、スイスのゾロトゥルンで開催された第35回ゾロトゥルン文学フェスティバルでのアメリカ、イスラエル、中国、日本の4カ国からの翻訳者とドイツ語圏スイスの研究者による国際シンポジウムにパネリストとして参加し、翻訳者からみた20世紀スイス文学の可能性について研究発表を行った。
スイスの作家、文学研究者、科学者、翻訳者たちが<主体>について論じた論集『Ortlose Mitte. Das <Ich> als kulturelle Hervorbringung.(場所なき中心ー文化の生み出す「わたし」)』に学術論文「Inszenierung der Ich-Fiktion auf der Buehne der japanischsprachigen Robert Walser-Ausgabe (日本語版ヴァルザー作品集の舞台上での<わたし>という虚構の演出)」を執筆、刊行した。
2013年11月28日ー30日にフランスのナンシー大学で開催された国際シンポジウム「Hohe und Niedere Literatur (高尚文学と低俗文学)」に参加し、研究発表を行った。
津田塾大学紀要第46号に『アリバイとしての探偵小説、あるいは精神医学に抗して書くことーF・グラウザーの「狂人が支配する」試論』を執筆、刊行した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当該年度の研究計画のうち、5月のスイスでのワークショップ、シンポジウム参加については、予定通りの成果をあげることができ、ドイツ語圏にとどまらず、中国、イスラエル、東欧などの各国翻訳者との活発な学術的交流を行うことができた。また、ローザンヌ大学の文学翻訳センターのスタッフからは現代スイス文学、文学翻訳をめぐる最新の状況について情報をいただくことができた。
また、<主体>をめぐる寄稿論文については、スイスに関わる文系、理系両方にまたがる各国研究者による学際的な出版物において、日本語というまったく異なる言語体系からの主体論を提供することで、論集の射程の拡大に貢献することができたと考えている。
津田塾大学紀要に掲載した日本語論文で論じた、精神医学の言説に対するフリードリヒ・グラウザーの文学的介入をめぐる議論は、その後のフランスでの国際シンポジウムでの発表においてさらなる展開のための示唆を得ることができた。
なお、昨年度に提出した研究計画にあげた項目の中では、ドイツのメッツラー社から刊行予定の作家研究シリーズへ執筆した論文のみが、平成25年度ではなく、26年度に成果発表されることになる。

今後の研究の推進方策

『ローベルト・ヴァルザー作品集(全5巻)』の日本語訳を完結させ、日本の読者に20世紀文学の古典として世界中で翻訳・研究が進められている作家ヴァルザーについての全体像を提示するとともに、さらにヴァルザーの思考の細部に踏み込むことを可能にする、ヴァルザー作品のさらなる翻訳プロジェクトを計画する予定である。
ヴァルザーと並び、20世紀前半のスイス文学の古典となりつつある、フリードリヒ・グラウザーについて、さらに研究を進め、近代的主体をめぐる言説に対する、ダダイスト、多言語作家、探偵小説作家グラウザーの文学的な抵抗の方法を明らかにする。
フランス語、ロシア語、ハンガリー語、セルボ・クロアチア語からドイツ語への翻訳者でありながら、自らの多言語的な出自の持つ意味を文学的に問い続けている、作家イルマ・ラクーザの越境的多言語性について論文を執筆する予定である。
こうしたスイス現代文学が生まれるスイス特有の文脈についての理解を深める基本書籍『現代スイスを知るための60章』を共同執筆したものが、明石書店から刊行される予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] アリバイとしての探偵小説、あるいは、精神医学に抗して書くことーF・グラウザーの長編小説『狂人が支配する』試論ー2014

    • 著者名/発表者名
      新本史斉
    • 雑誌名

      津田塾大学紀要

      巻: 46 ページ: 97ー130

  • [雑誌論文] 『ペンテジレーア』における戦争の表象ー比較翻訳読解の試みー2013

    • 著者名/発表者名
      新本史斉
    • 雑誌名

      日本独文学会研究叢書

      巻: 95 ページ: 49ー61

  • [学会発表] Kriminalroman als Alibi.Friedrich Glausers parodierendes Romanprojekt der Moderne2013

    • 著者名/発表者名
      Fuminari Niimoto
    • 学会等名
      Hohe und niedere Literatur. Tendenzen zu Ausgrenzung, Vereinnahmung und Mischung
    • 発表場所
      フランス、ナンシー
    • 年月日
      20131129-20131129
  • [学会発表] Robert Walser Weltweit. Podiumgespraech2013

    • 著者名/発表者名
      Fuminari Niimoto
    • 学会等名
      35. Solothurner Literaturtage
    • 発表場所
      スイス、ゾロトゥルン
    • 年月日
      20130509-20130509
    • 招待講演
  • [図書] Ortlose Mitte. Das Ich als kulturelle Hervorbringung.2013

    • 著者名/発表者名
      Fuminari Niimoto
    • 総ページ数
      237(212-222)
    • 出版者
      Metzler

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公開日: 2015-05-28  

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