研究課題/領域番号 |
24520369
|
研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
黒子 康弘 日本女子大学, 文学部, 准教授 (50305398)
|
キーワード | リルケ / ゲーテ / ナチズム / プロパガンダ的文学史 / ユード・C・メイソン / 実存主義 / 精神分析 / 四季 |
研究概要 |
本年度は、第二次世界大戦前夜や戦中ドイツにおける「ドイツの詩人としてのリルケ」という言説形成過程と、戦後のドイツや英国や日本におけるその言説に対する反応(拒絶や補完)の解明を行うために、Deutsches Literaturarchiv Marbachにて日本国内では手に入らない古書・雑誌を中心に調査・読解を行った。議論の前提となる文芸思潮の解明に関しては、当初予定していた1930・40年代の文芸雑誌Dichtung und VolkstumやDeutsche Vierteljahresschrift所収の記事や論文に加え、日本国内にとどまっていては手にすることができない多くの辞典、雑誌、単行本を、より幅広い時代に亙って参照することができた。その成果として、リルケ受容の最初期における文芸思潮の諸相を明らかにするとともに、戦前と戦後における「ゲーテとリルケ」というテーマに対する研究者たちの反応を俯瞰する論文(「リルケとゲーテ」という主題について: リルケ受容史に関する批判的考察)を執筆することができた。またそれに加えて、1940年代前半という、ナチス追随文学者たちが詩人をナチス・イデオロギーに貢献させようとすることで、極めて恣意的なリルケ読解の行われた時代の文献を数多く読む機会に恵まれたことから、「捻じ曲げられた」リルケ解釈について、論文(ナチス時代のリルケ―一九四〇年代前半に読む抒情詩人)に纏めることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Deutsches Literaturarchiv Marbachでの研究に、夏季の比較的まとまった時間を当てることができたことは本研究に大きな進捗をもたらした。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度と二年目の成果を一つの有機的な全体へと纏め上げるために必要なあらゆる作業を行う。第一に、ゲーテとの内的な連関を示すリルケの書簡を精査し、再評価する。第二に、戦前と戦後における「ゲーテとリルケの連関」という論点の意義を、それぞれの時代の文芸思潮に照らして客観的に記述する。そして、以上の議論で明らかになったことを、ゲーテ時代からリルケの時代、さらに現代に通じる大きな歴史的脈絡の中で、批判的に検討する。この段階で、「リルケとゲーテの連関」の様々な検証可能な客観的事実の奥に一歩踏み込んで、「感情Gefuehl」、「雰囲気Stimmung」、「情念Affekt」といった近代ドイツ抒情詩人の共通の問題意識を追究し、それを、二人の詩人の生きた時代の社会状況、思想、哲学、芸術、歴史的位相に照らして論じることが試みられる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度は2回の海外出張を見込んでいたが、結果として1回の出張を行うにとどまった。したがって1回分の海外出張旅費が、当初予定していなかった次年度使用額として残ることになった。 海外出張旅費として使用予定である。
|