本研究によって、20世紀のリルケ研究を、ドイツ国内と外部の両面から批判的に検討することができた。これまで無視されてきた「ゲーテとリルケの連関」について、その問題設定の哲学的、歴史的意義を明確にした。それに伴い、戦前から戦中の「ドイツの詩人リルケ」という言説の形成が具に観察された。またそれと対を成す「ドイツ的神の探求者リルケ」という言説についても一定の理解を得、その問題性を研究史上に位置づけた。リルケとゲーテの内的連関については、いわゆる「ベッティーネ体験」をめぐって全く新たな見解を示すことができた。リルケの宗教的アイデンティティ、ドイツ性、オーストリア性について、ニーチェとの比較で論じた。
|