研究課題/領域番号 |
24520371
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
澤田 直之 立教大学, 文学部, 教授 (90275660)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | サルトル / 実存主義 / アメリカ |
研究概要 |
本年度は、本研究に必要な膨大な資料を丹念に読み込み、その中から、アメリカ滞在によってサルトルが新たに得た知見を拾い上げ、検討する作業を行った。 1945年1月、『フィガロ』紙、『コンバ』紙の特派員として、初めて渡米したサルトルは5月まで滞在しただけでなく、同年の12月から翌年4月まで再び、アメリカに渡り、そこで黒人問題をはじめ、多くの社会現実に目を開かれるようになった。特派員としてサルトルは二紙に合計31にのぼる記事を寄稿している。 1946年にはアメリカを舞台にした演劇『恭しき娼婦』を発表するだけでなく、自らが主宰する『現代』誌11-12合併号で400頁に及ぶアメリカ特集を組む。これはサルトルの合衆国滞在中に交流したアメリカの作家、批評家、大学人などとの交流によって可能になったものである。 1949年に出版された『自由への道』第三部には、それまでヨーロッパに限定されていた舞台が突如アメリカにまで拡大され、スペイン人画家ゴメスのニューヨークでの生活が描かれるが、そこにはサルトル自身の滞在経験が色濃く反映していることは間違いない。 これらのテクストを精査し、同時代のアメリカの様々な現象とつきあわせながら、これらのテクストに表れるアメリカの表象やアメリカに関する考察を抽出した。 以上の作業によって、これまで知られるところの少なかったサルトルの実存主義の展開におけるアメリカの寄与した要素を明瞭にする展望が開けたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度に関しては、膨大な資料の読み込みが中心であったが、ほぼ予定どおりに遂行することができた。 フランス国立図書館での資料調査の過程で、予想していなかった発見もかなりあり、これらについては論文や学会での発表の形で公開していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き1940年代後半のサルトルの発表作品に見られるアメリカに関する考察の抽出を行い、それをできればデータベースのような形でまとめていく作業を行っていきたい。これらのコーパスから見てとれることは、サルトルがアメリカの現状を正確に把握しているという事実であるが、アメリカをめぐる考察は、様々な言説を通して表明される他の知識人、政治的グループの意見との間の特殊な緊張関係の下で展開していく。この点を実証的に分析するために、アンドレ・ブルトンやクロード・レヴィ=ストロース、ウラディミール・ポズネールといった同時代のアメリカ在のフランスの作家や思想家との比較も試みるとともに、サルトルの作品がアメリカのメディアにどのような形で、また誰によって紹介されていったかについても分析を進めることにしたい。 また、『恭しき娼婦』はアメリカを舞台に黒人問題を全面的に扱った戯曲であるが、その作品の構想のもととなった状況についても詳しく調べてみたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
海外出張旅費、図書および資料、備品購入、通信費などとして、使用することを予定している。
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