• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実施状況報告書

フランス実存主義とその外部:ジャン=ポール・サルトルとアメリカ

研究課題

研究課題/領域番号 24520371
研究機関立教大学

研究代表者

澤田 直之  立教大学, 文学部, 教授 (90275660)

キーワードジャン=ポール・サルトル / 実存主義 / アメリカ
研究概要

前年度に引き続き1940年代後半のサルトルの発表作品のうちで、ジャーナリストとしてアメリカに派遣された際に執筆した記事、帰国後の関連論考を精読し、アメリカに関する考察抽出を行い、それを分析する作業を行った。これらのコーパスから、サルトルがアメリカの現状を正確に把握しているという事実、その状況をフランスに積極的に発信しようとしていることが読み取れた。
サルトルのアメリカ都市の描写は、エッセーであれ、小説であれ、ニューヨークが中心となっている。特に『自由への道』第三部の冒頭では、夏のニューヨークを彷徨する画家ゴメスの様子がきわめて写実的に描かれており、評論「植民地的都市ニューヨーク」でも具体的な場所の描写がつねに考察の入り口となっている。これらのテクストの記述と現実の場所との関係などを比較しながら、文明論的な観点も考慮しつつ、分析を試みた。
その一方で、アメリカをめぐる考察は、他の知識人、政治的グループの意見との間の緊張関係の下でも展開している。この点を分析するために、アンドレ・ブルトンやクロード・レヴィ=ストロースなど、同時代のアメリカ在のフランスの作家や思想家との比較も試みた。また、サルトルの作品がアメリカのメディアにどのような形で、また誰によって紹介されかについても分析を行った。
今年度に調査・研究した内容は、「野営地と廃墟---ジャン=ポール・サルトルの見たアメリカ」と題する論考にまとめ、澤田直編『移動者の眼が露出させる光景---越境文学論』弘学社2014)に収録された。また、アメリカを直接に題材としたものではないが、サルトルの写真論を日本語、英語、フランス語で発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の予定どおりに研究は概ね順調に進捗している。研究成果は、直接に関係したものが一つの論考として、間接的なものが別の論考(日本語、英語、フランス語で公刊)として発表された。テキサスに保管されている草稿研究については、余裕がなくて果たせなかったが、これは全体の進展に大きな影響を与えるものではない。

今後の研究の推進方策

これまでの調査研究の成果をとりまとめ、サルトルにおけるアメリカ体験がフランス実存主義にどのように反映されることになったのか、その見取り図を素描するとともに、サルトルだけでなく広く米仏の知識人の関係がこの後どのような進展を見せることになるのかについても一定の見通しを立てることにしたい。ヨーロッパ、アメリカでのサルトル学会などに参加して、積極的に意見交換を行い、最終的には報告書の作成に取り組む予定である。もとより、フランス作家とアメリカの関係はシャトーブリアンやトックヴィルにまで遡る連綿と続く系譜があり、サルトルのアメリカも、このような流れのなかで考えるべきだが、今回はそこまで拡げることはせず、あくまでもフランス実存主義の生成とアメリカ体験という点に焦点をしぼり、今後のより包括的な研究への基礎としたいと考えている。当初視野にも入れていた草稿研究の調査に関しては、今後の課題として、研究の焦点を絞ることにしたい。

次年度の研究費の使用計画

予定していた資料の購入が、出版時期の遅れなどからできなかったため。
物品費として、必要な関連資料の購入、発表論文などの郵送、文具などの消耗品を、旅費として、海外研究調査旅行の旅費、謝金として、外国語論文の校閲や資料整理を予定している。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] Sartre et la photographie : autour de la theorie de l’imaginaire2013

    • 著者名/発表者名
      Nao Sawada
    • 雑誌名

      Etudes francaises, "Jean-Paul Sartre, la litterature en partage"

      巻: le volume 49, numero 2 ページ: 103-121

    • 査読あり
  • [学会発表] 眠れる森のマルグリッド・デュラス

    • 著者名/発表者名
      澤田直
    • 学会等名
      立教大学文学部フランス文学専修主催「マルグリット・デュラス生誕 100 周年国際シンポジウム」
    • 発表場所
      立教大学(東京都豊島区)
  • [学会発表] 他者の現象学----プルーストを読むレヴィナス、サルトル

    • 著者名/発表者名
      澤田直
    • 学会等名
      明治学院大学文学部フランス文学科主催コロック「プルーストと20世紀」
    • 発表場所
      明治学院大学(東京都港区)
  • [図書] 移動者の眼が露出させる光景---越境文学論2014

    • 著者名/発表者名
      澤田直編, 阿部賢一, 昼間賢, 林志津江,坂本浩也, 後藤和彦,藤井淑禎, 新田啓子, 澤田直著
    • 総ページ数
      225 (4-6, 189-219)
    • 出版者
      弘学社
  • [図書] Severally Seeking Sartre2013

    • 著者名/発表者名
      Benedict O’Donohoe (ed), Nao Sawada, T. Storm Heter, Graig Matarrese, Cam Clayton, Danielle M. LaSausa, David Lethbridge, Damon Boria, Bill Martin, Antoine Krieger, Rebecca Pitt, John Ireland, Benedict O’Donohoe
    • 総ページ数
      209 (12-36)
    • 出版者
      Cambridge Scholars Publishing
  • [図書] 写真と文学 何がイメージの価値を決めるのか2013

    • 著者名/発表者名
      塚本昌則編、林道郎、森元庸介、塚本昌則、坂本浩也、内藤真奈、野崎歓、港千尋、鈴木雅雄、斎藤哲也、星埜守之、永井敦子、倉石信乃、桑田光平、昼間賢、佐々木悠介、澤田直、滝沢明子、管啓次郎著
    • 総ページ数
      380 (277-293)
    • 出版者
      平凡社

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi