研究課題/領域番号 |
24520373
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
原 克 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (40156477)
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キーワード | 科学表象 / 原子力エネルギー表象 / 科学ジャーナリズム / メディア / 数学的合理性 / 科学情報 / 表象分析 |
研究概要 |
本研究は20世紀に於ける「原子力エネルギー表象」の仮構性を表象文化論的に解明することを目指した。分析方法としては、「近代の科学神話」という枠組みの中で、とりわけ「原子力エネルギー」をめぐる大衆的科学表象に特化し、ポピュラー系科学雑誌に現れた「テキストの語り口」「図像的演出」に焦点を当て、原子力エネルギー表象が、より広範な科学信仰・進歩信仰を成立させてきた表象基盤構造と根本において同期性・根幹的連動性を有することを批判的に明らかにした。その分析作業を通じて、原子力表象・安全信仰が単独で生起してきたわけではないことを具体的に解析することにより、21世紀に求められるべき科学と大衆の新たな関係性をめぐる理論的視座を総体的な科学表象批判の観点から提言することを目指した。 その結果、当該の原子力エネルギー表象もひとり20世紀初頭原子物理学の学的言説によるばかりではなく、より広義に於ける数理的・数値計測的課題についての学的・非学問的言説などが起動させるとりわけ「数学的合理性」表象の前言説的枠組みによっても極めて密接且つ錯綜した複合的表象関係をもつことが分かった。 そこで本来の研究目的を果たすためにも本年度は数理的機能原則による「情報処理機器」をめぐる前言説的諸条件の実相に焦点を当てた研究活動・執筆活動を行った。具体的成果としては単行本・単著『OL誕生物語』(講談社)ならびに18本の「モノ進化論」分析等によって達成された。 猶、一般財団法人「日本再建イニシアティブ」(理事長船橋洋一)主催の研究会「ライフスタイル革命委員会」に於いて(主題「ポスト3.11福島原発事故」)本研究の問題設定の視点から研究成果を一年間に亘り随時発信した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに収集した資料の分析に続き従来の分析から解明された科学的主題全般の表象構造を前提としつつも、とりわけ「原子力エネルギー」表象を中心に再収集・継続的分析をおこなう予定だったが平成20年度末に刊行された著書『ポップ科学大画報』で取り扱った「ニューク・ポップ」(「大衆向け原子力エネルギー表象」の総称)を継続発展させて「原子力平和利用」「ビキニ環礁水爆実験」「アメリカン・コミックに於ける原子爆弾」「ウォルト・ディズニーと核実験」「原子力発電」等、20世紀大衆社会・大量消費社会の構成要素とされた「核の平和利用」表象圏について一応予備的分析を進めることができたからである。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度以降の研究計画・方法も平成25年度のそれと本質的な変更はない。ただし達成すべき成果としてはこれまで扱ってきている項目に引き続き、新たに次の段階として「原子力エネルギーと未来構想」、「原子力日用品」、「原子力促成栽培計画」、「原子力エレベーター」等約20項目の分析に移る。平成26年度も論文2本程度及び単著書1冊を出版する予定である。
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