科学主義の時代のフランス文学において、科学とは対極にあるとされる、白昼夢およびその変形としての諸現象(幻覚、錯覚、妄想、幻影など)がいかに描かれているかを、当時の医学書や論文に照らし合わせて分析する。また、こうした白昼夢やその変形としての諸現象は、無意識の表出であるとも捉えられるため、フロイト前夜において文学がいかに内面性や意識下を描いているかを、文学における科学言説の受容といった観点から検討する。 当該年度においては、昨年度につづき、19世紀半ばに影響力のあったイポリット・テーヌの著書と、フロベール、ゾラ、モーパッサンの文学作品を対峙させ、両者において、白昼夢の描かれ方がどのように重なりあい、どのように差異化されうるかを考察した。またその延長として、近代日本文学における白昼夢について分析し、比較文学的読解を試みた。
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