研究課題/領域番号 |
24520379
|
研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
野口 芳子 武庫川女子大学, 文学部, 教授 (30164685)
|
研究分担者 |
溝井 裕一 関西大学, 文学部, 准教授 (60551322)
大野 寿子 東洋大学, 文学部, 准教授 (20397491)
山本 まり子 聖徳大学, 音楽学部, 教授 (00383448)
|
キーワード | ドイツ / ドイツ伝承文学 / ジェンダー学 / グリム童話の父母像 / 伝承文学の父母像 / 学際的研究 |
研究概要 |
6月22日ー7月2日、リトアニア国ビリニュス大学で開催された国際口承文芸学会で、代表者野口が発表した。演題は「ヴィクトリア朝英国の影響を受けた日本のグリム童話」(英語)で、グリム童話の日本への導入は英語教科書や英訳本からの重訳によって行われ、ヴィクトリア朝英国の影響を色濃く受けたものであることを明らかにした。とりわけヴィクトリア朝のジェンダー観が、日本の翻訳に多大な影響を与えていることを明らかにした。この学会で世界の著名なグリム研究者や口承文芸研究者と研究交流することができた。特にジェンダーの視点からの研究で知られるルース・ボッテックハイマー(米国)との意見交換は有意義であった。 9月7日、日本ジェンダー学会大会を武庫川女子大学で開催した。代表者野口が大会実行委員長であり、シンポジウム「伝承文学における父親像と母親像」を企画した。野口はそこで、「ドイツ伝説集のおける父親像と母親像」という題名で発表し、ドイツの伝承文学を、日本、中国、英国の伝承文学と比較することによって、その特徴を明確につかむことを目指した。 9月27-28日、日本独文学会秋季大会が北海道大学で開催され、科研のメンバー全員がシンポジウム「グリム童話とドイツ伝承文学における父親像と母親像」で発表した。分担者溝井が「ハーメルンの笛吹き男伝説の場合」、分担者山本が『『少年の魔法の角笛』に基づく音楽作品の場合」、連携者竹原が「『灰かぶり・千枚皮』の場合」、金城ハウプトマンが「ドイツ語圏の現代伝説の場合」、代表者野口が「グリム童話全体における父親像と母親像」について発表した。野口はこのシンポジウム企画責任者と司会者を務めた。伝承文学における父親や母親は子どもに対して残酷であるという研究結果が出そろった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.「グリム童話出版200年祭」のシンポジウムを予定通り、ドイツと日本で開催することができた。さらにその成果を、国内学会(日本独文学会、日本ジェンダー学会)で発表しただけでなく、代表者野口はドイツの学会(グリム兄弟協会学会、ドイツ・カッセル)や国際学会(国際口承文芸学会、リトアニア・ビリニュス)でも発表し、研究成果を広く世間に公表することができた。 2.今年は特に父親像と母親像に焦点を当てた研究に取り組んだが、それによって伝承文学における家族像の輪郭がかなり明確にされてきたように思う。とくに独文学会での発表で、伝承文学を様々な角度から考察したので、親と子の関係を客観視することができるようになった。 3.日本ジェンダー学会大会で「伝承文学における父親像と母親像」というテーマでシンポジウムを開催することによって、出現する父親像や母親像をドイツだけでなく、英国、中国、日本の伝承文学における父母像と比較することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
1.日本独文学会のシンポジウムで科研メンバー全員が発表したが、その原稿を「研究叢書」という形にまとめて出版することを目指す。 2.日本ジェンダー学会大会で代表者野口が発表した原稿を、学会誌『日本ジェンダー研究』に論文という形でまとめて掲載することを目指す。 3.国際口承文芸学会で発表した原稿を、世界的に有名な学術雑誌”Fabula"に掲載されるよう、英語論文にまとめて提出し、受理されるよう努力する。 4.日本におけるグリム童話受容の問題について調べるため、カッセルのグリム博物館やゲッティンゲンのメルヒェン資料館および、英国の大英図書館などを中心に資料調査に出かける。 5.これまでの研究成果についてまとめる必要があるので「研究会」を開催する。
|