研究課題/領域番号 |
24520380
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研究機関 | 天理大学 |
研究代表者 |
大平 陽一 天理大学, 国際学部, 教授 (20169056)
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キーワード | 構成主義 / 社会主義リアリズム / 建築理論 / ソビエト宮殿コンペティション / 機能主義 / プラハ言語学サークル |
研究概要 |
当該年度は,1934年から38年にかけてチェコスロヴァキアの左翼文化人の内部において,共産党系文化人とアヴァンギャルディストたちの間で交わされた社会主義リアリズムをめぐる議論において,後者のリーダー的存在であったタイゲの建築論を,保守的な美学への回帰として社会主義リアリズムの先駆けとなった1932年に始まる一連の《ソビエト宮殿》の前後で比較した。 その結果,タイゲの建築論においては,建築論においてはより古くから用いられている「機能主義」が,20世紀のロシアに生まれ,欧州に広がった「構成主義」というより新しい用語にかわってタイゲにとってのあるべき建築をさす術語として用いられるようになっているという逆説的な現象が観察された。こうした術語の変化は,タイゲの支持していた構成主義がソ連において保守的,擬似古典的な社会主義リアリズムによって抑圧されていった事態への失望感を反映しているのであろう。 しかし,タイゲの「機能」という語の使用例を詳細に検討するならば,そこには古くからの機能主義建築論の言う単数形の「機能」,すなわち「実用」機能とは別の「機能」の概念を示唆されている複数形の用例が次第に頻用されるようになっている事実に気づく。この変化に示唆されている多機能主義への転換は,建築理論の最新動向よりは,1926年にプラハで結成され,言語学にとどまらずフォークロア研究や美学において多くの業績を残したプラハ学派の機能構造主義からの影響を想起せしめる。これまで言語学と詩学の研究で知られるプラハ学派の主要メンバー,ヤコブソンやプラハ学派の構造美学を代表するムカジョフスキーが,共産党系文化人の非難に対しアヴァンギャルディストたちを擁護した事実は知られているが,タイゲの建築論が盟友でもあったプラハ学派の研究者たちの機能主義から影響を受けている可能性については,従来いかなる指摘もなされていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1934年から38年にかけてチェコスロヴァキアの左翼文化人の内部において共産党系文化人とアヴァンギャルディストたちの間で交わされた,社会主義リアリズムをめぐる議論そのものを考察するまでに至っておらず,理論的に重要でありながら従来等閑視されてきた事実とはいえ,論じる社会主義リアリズムをめぐる議論にいたる背景についての研究に手間取っているきらいがある。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度においては,スターリン主義者たちとタイゲに代表されるアヴァンギャルド陣営の間の激論や対立だけではなく,後者から前者へと立場を変え,社会主義リアリズムの立場からタイゲらアヴァンギャルディストを手厳しく批判するに至った文芸評論家のヴァーツラヴェクの理論面での転向についても検討を加えたい。 また,上記の論争においてチェコスロヴァキアのアヴァンギャルド芸術を擁護した美学者ムカジョフスキーが,第二次世界大戦後に社会主義政権が成立した後,自らの構造主義美学を社会主義リアリズムの立場から批判した論考についても紹介を試みたい。
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