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2012 年度 実施状況報告書

トポスとしてのアビシニア――近代日欧におけるアフリカ認識の変転

研究課題

研究課題/領域番号 24520382
研究種目

基盤研究(C)

研究機関東北大学

研究代表者

藤田 緑  東北大学, 国際文化研究科, 教授 (10219024)

研究分担者 佐藤 研一  東北大学, 国際文化研究科, 教授 (80170744)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード国際情報交換 アメリカ合衆国
研究概要

英国は1798年ナポレオンのエジプト遠征を契機に、1839年アラビア半島南端アデンを占領、欧州とインドを結ぶ要衝を確保して、アフリカ大陸への進出も果たす。1841、49年にアビシニアの一地方王と友好通商条約を締結。宣教団体も同国で活動を始めてはいたが、同国が一般の英国人の意識に上ることはなかった。他方、文芸では、18世紀欧州を席巻したジョンソンの『アビシニアの王子』は依然として版を重ね、また、19世紀早々にはブルースによるナイル川源流発見の為のアビシニア探検記(1790)が再販されてもいた。だが、確固たるエチオピア像が形成されたわけではない。19世紀初頭までの英国・アビシニア関係史を確認し、以上の事柄を詳らかにした上で、藤田は19世紀中葉に起こったアビシニア皇帝による英公使ら欧州人の拘束事件から軍事衝突へと発展した「1868年アビシニア戦争」に研究を進めた。現代では等閑視されているが、同戦争は意外にも英、米、印から多くの新聞記者が派遣された。そこで、春季休暇を利用して大英図書館でこれら従軍記者の記事を中心に文献調査を行った。その過程で従軍記者に関する新情報の発掘もかなったが、予想を超える膨大な文献の故、次年度も調査を継続する。現段階ではそれらを通して、英国におけるアビシニア観を見定めつつある。さらに、同戦争が文学に及ぼした影響に関する考察の糸口を掴むこともできた。また、戦争終結後、英国に渡ったアビシニア皇帝の遺児、幼いプリンスの英国における処遇の実態に考察を加えることにより、当時の英国人のアビシニア認識の一端が明らかとなった。 佐藤は、同戦争の際、アビシニア皇帝により拘束された欧州人の中にドイツ人が多く含まれていた事実に注目して、まずクニッゲの風刺小説『アビシニア啓蒙物語』からはじめて、ドイツ文学に表れるアビシニア像を考察中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

夏季休暇を利用して、大英図書館にて、報道記事の調査のみならず、外務省記録や個人の手記の悉皆調査も行う予定であったが、公務のため、不可能となった。そこで、ごく短期間であるものの、春季休暇中に、海外調査を一部実施した。このような理由から、所期の目的を十二分に達成することができなかった。

今後の研究の推進方策

藤田は、日本を公式訪問したアビシニア使節を中心に、外務省等の外交資料を精査して、アビシニアと日本の関係に考察を加える。また、夏季休暇を利用して、大英図書館にて、19世紀アビシニア戦争に関する文献調査を行って、同戦争が文学に及ぼした影響も見定める。さらに、日本を手本としたアビシニア近代化関係資料も収集する。
佐藤は、19世紀ドイツにおけるアビシニア・イメージについて、文学や報道記事などに基づき考察する。

次年度の研究費の使用計画

当初、夏季休暇を利用して、大英図書館にて、アビシニア戦争報道記事から外務省記録や個人手記まで悉皆調査を行う予定であったが、公務のため、それが不可能となり、春季休暇の短期間のみ、同調査の一部を実施した。次年度使用額は、その理由で生じたものであり、延期した同調査に必要な経費として平成25年度請求額と合わせて使用する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] アビシニア狂詩曲――皇太子アラマユの数奇なる短い人生2012

    • 著者名/発表者名
      藤田 緑
    • 雑誌名

      国際文化研究科論集

      巻: 20 ページ: 1-15

    • 査読あり
  • [学会発表] コッツェブーの描くインド――喜劇『英国のインド人』をめぐって

    • 著者名/発表者名
      佐藤研一
    • 学会等名
      第75回十八世紀ドイツ文学研究会
    • 発表場所
      法政大学市ヶ谷キャンパス
  • [図書] J・M・R・レンツ作 喜劇『家庭教師』『軍人たち』2013

    • 著者名/発表者名
      佐藤研一(翻訳者)
    • 総ページ数
      264
    • 出版者
      鳥影社

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公開日: 2014-07-24  

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