研究課題/領域番号 |
24520388
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
上田 望 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (90293331)
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キーワード | 伝統芸能 / 寧波 / 地方劇 |
研究概要 |
中国浙江省の農村部において地域固有の伝統芸能の現地調査を実施し、収集した資料を整理・電子化した上で芸能データベースを構築し、貴重な映像・文字資料を保全すること、そして得られたデータに統計処理を施し、中国伝統芸能マップを作成することなどを通じて伝統芸能のテクストが創り出されるメカニズムや文化資源としての活用方法を明らかにすることが本研究の主たる目的である。 平成25年度は、資料整理に関しては当初の計画通り、すでに入手している映像資料の処理と文字化、文献資料の整理・電子化を進め、中国伝統芸能映像資料データーベースのデータ更新を進めた。そのうち、蘇州の伝統芸能の文献資料については、中国の蘇州大学と共同で整理を進め、報告書『蘇州大学図書館蔵弾詞「描金鳳」』(上田望編集,金沢大学人間社会研究域)を公刊した。 現地調査による資料収集については、当初の計画では平成25年度は実施しない予定であったが、平成24年度は日中間の政治状況などから予定していた2度の調査が1度しか実施できず、また、寧波の芸能「寧波走書」の芸能者に芸能の脚本などに関してインタビューする必要があったことから、平成26年2月の旧正月(春節)に代表者が浙江省寧波市に赴き現地調査を実施して寧波市内各地の農村で演劇の上演を調査し、また施凱盛氏の協力を得て寧波走書の芸能者である聞海平氏にインタビューをおこなうことができた。現地調査で得た資料はすべて電子化し、聞海平氏が所蔵していた寧波走書の演出本「瑞龍寄螟」「乾隆遊寧波」の解読と電子化の作業を一部おこなった。 一連の現地調査で得た知見に基づき、寧波と古典伝統演劇の関係性について明らかにした論考「浙江東部の伝統演劇を求めて―寧波の伝統芸能空間」(高津孝編・小島毅(監修 『東アジア海域に漕ぎだす3 くらしがつなぐ寧波と日本』)を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地調査による資料収集については、平成26年2月の調査において、思いのほか多くの劇団・芸能者と接触し、上演の撮影ができたことで前年度に実施できなかった調査を補うことができた。また、現地で新たに収集した映像・脚本資料の整理に時間を取られたために、統計処理による分析が十分にはできなかったものの、研究成果は着実に公表できており、平成25年度の所期の研究目的はほぼ達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
1)映像資料の処理と文字化、文献資料の整理・電子化、自然言語処理の統計プログラムを用いたテクスト解析を平成26年12月までに完了する。 2)予定している寧波走書などの脚本の解読と電子化を完了し、基礎的な統計処理データを携えて再度、寧波に赴き芸能者にインタビューを実施する。 3)報告書の刊行、中国伝統芸能データベースの公開、中国宝巻研究国際研討会(揚州大学於平成26年10月)を通じて研究成果を公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年度は本研究の最終年度であり、データの分析から得られた芸能テクスト創出のモデルを現地調査を実施することでフィードバックして検証をおこなうとともに、報告書とデータベースを利用して研究成果を公表する予定である。前年度未使用額が生じた理由は、平成26年2月の現地調査で映像資料の購入を計画していたが、現地で入手できなかったために未使用額が若干発生した。 平成27年2月の現地調査旅費(海外)とデータ整理補助の謝金、備品(図書費)、報告書刊行のための印刷費を予定している。
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