研究課題/領域番号 |
24520389
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
櫻井 龍彦 名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (60170643)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換 / 中国 |
研究概要 |
初年度は利用する石碑、絵画、画報資料などの所在の確認と、その実見や調査が可能かどうか現地で再確認し交渉する年度であった。北京では碑文は東岳廟で約200枚の写真撮影をした。文面の解読はこれからである。首都博物館で『妙峰山進香図』を閲覧できた。これは一般には公開しない貴重な絵画で、閲覧の機会を得るために苦労した。撮影は不許可であるため、この絵画を利用して研究を進めることは困難と判断した。天津では天后宮で『天津天后宮行会図』を閲覧できた。しかし状況は首都博物館をまったく同じである。関係者の好意で閲覧はできたが、撮影は許可されず、目で記憶するのみである。従ってこの絵図をもとに研究を進めるのも難しいと判断した。また画報については、各図書館で調査したが、目録にはあっても実際には所蔵していないものがあり、成果は得られなかった。 5月、台湾(台中)で「2012臺中媽祖國際觀光文化節─媽祖國際學術研討會」に参加し、基調講演をした。また鎮爛宮媽祖廟も調査した。9月、北京では北頂と東岳廟の調査をした。碑文の撮影は200枚以上にのぼる。天津では蘇庄、大宋庄、大楊庄、葛沽鎮を中心に香会の会首に聞き取り調査をした。2013年2月~3月、北京では大覚寺で妙峰山信者の墓と古道を調査した。天津では葛沽鎮で元宵節の祭礼を調査し、香会の会首や文化局で聞き取り調査をした。 現地協力者の山東大学趙彦民氏は独自に5,7月、北京と天津で調査をし、9月までの聞き取りの文字起こしを完成させた。A4で170ページにまとめた。 論文の成果は、「媽祖文化在日本的展開─其傳來與分布以及吸收與利用─」『2012台中媽祖国際観光文化節-媽祖国際学術研討会論文集』台中市政府文化局編印と「人口稀疏化郷村的民俗文化伝承危機及其対策」『民俗研究』2012年第5期(総第105期)がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査の対象は(1)北京、天津の香会の会首や会員。(2)北京、天津の廟にある碑文。(3)妙峰山廟会、天后宮香会に関する絵画資料。(4)北京、天津の廟会に関する画報資料であり、調査の目的はそれぞれ(1)は、祭祀組織とその活動について会首や会員から聞き取ることで組織の現状分析をする。(2)は碑文から香会組織の歴史的実態の解明をする。(3)は絵画に描かれた廟会の様子や香会の活動を読み取る。(4)は画報に掲載された廟会、香会などの写真資料を収集し、それらに関する広告文をさがし、特に民末期の活動を読み取ること、にある。 こうした作業から碧霞元君信仰と媽祖信仰をめぐる祭祀芸能に多角的にアプローチできるとともに、信者組織の経済的な基盤(たとえばギルドや海運業など)を探ることができる。 今年度は(4)を除いて、基礎的な段階の調査はほぼできた。しかしその過程で、多くの絵画や画報が閲覧不可能と判明したため、次年度以降、計画を再考する必要もでてきた。媽祖信仰については、台湾での国際学会に参加できたことも今年度の成果である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)北京、天津の香会の会首や会員: 引き続き葛沽鎮を中心に香会の聞き取り調査をおこなう。これまでの予備的調査から、ここに集中して実施するのが成果があると考える。ただ、葛沽鎮は近く再開発に入り、この古い村落は消滅する。住民は引っ越しを余儀なくされるので、あと2年の調査期間は過渡期に入るため、調査の実現性を再確認する必要がある。 (2)北京、天津の廟にある碑文: 東岳廟で約200枚の写真撮影をしたが、文面の解読はこれからである。東岳廟については中国側の資料もあるので、それと対照させながら碑文を読み取る作業を進める。妙峰山やYaji山の碑文は本年度、趙彦民氏が調査してくれたが、時間が許せば、継続したい。 (3)妙峰山廟会、天后宮香会に関する絵画資料: 国家博物館が所蔵する絵画の閲覧について、引き続き人脈をたどって実現の可能性をさぐる。 (4)北京、天津の廟会に関する画報資料: 画報も多くが閲覧不可能とわかったが、可能なものもあるので、2015年度はその調査に着手したい。手始めは『北洋画報』である。 初年度の成果と今後の可能性をかんがみて、調査地に新しく碧霞元君信仰の本場である山東省泰山と媽祖信仰の本場である福建省を加えることにしたい。原点である発祥地からみた伝播の諸相も重要な課題だからである。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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