研究課題/領域番号 |
24520391
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮 紀子 京都大学, 人文科学研究所, 助教 (60335239)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | モンゴル時代 / ユーラシア史 / 大元ウルス / フレグ・ウルス / 東西交流 / 漢籍 / ペルシア語写本 / 書誌学 |
研究概要 |
イスタンブルのスレイマニイェ図書館、およびパリの国立図書館にて13-15世紀のペルシア語古写本の調査を実施した。モンゴル時代のとくに中国に関わるデータ、とうじのアフロ・ユーラシアの東西交流を実証する記述を含む歴史書、文集、類書(百科事典)、科学書、辞書、外交文書集、文書現物を重点的に閲覧し、可能な限りカラ―写真による複製を申請した。事前に徹底的に書目等で厳選してから調査に臨んだので、モンゴル時代の基本資料を最も良質な写本によって揃えられたばかりか、学界未紹介のテキストをいくつも将来することができた。資料帰国後、これらを焼き付け、簡易製本し、同時代の漢籍、石刻資料、抄物のデータと照合しながら、分析を進めている。同時に、ユーラシアの遊牧国家における軍事・政治の解明にむけて、これらの資料から軍事や政治の根幹にかかわる語彙に使用されているアラビク表記のテュルク語、モンゴル語の抽出作業を行い、中国の歴代正史、石刻資料等のなかにみえる漢字音訳された外来語や漢語に意訳された語彙と併せて比較・検討した。また、モンゴル時代のヨーロッパ諸語の文献(地図等の図像資料、多言語辞書、対訳資料も含む)はもとより、17世紀から20世紀初頭にかけて、ヨーロッパ列強の東方拡大を背景として編纂されたさまざまな資料集の収集にも努めた。これらを利用しながら、『書記典範』、『珍奇の書』等の訳注作業も開始した。今後、研究の展開上必須となるであろうラテン語・ロシア語の習得についても努力中である。得られたいくつかの新知見は、現在、論文数本にまとめつつあるほか、新資料の紹介や研究状況、こんごの見通し等について東方学会、研究会等で随時、報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた海外調査のうち、台湾、ドイツについては年度内に実施できなかったが、研究に必要不可欠のペルシア語古写本を十分な質量で将来できた。また、1950年代ー80年代前半にかけてゲッティンゲン大学で研究がすすめられていたフレグ・ウルス(イル・ハン国)の財政書のペルシア語古写本数種の校訂・ドイツ語訳も入手し、絶版となっているイラン・トルコのペルシア語古写本のfacsimileも複数集めた。これらによって、訳注作業を進めるうえでの最低限の環境が整った。また、ペルシア語等諸言語資料における外来語の抽出・分析、中国歴代正史、典籍・文書・碑刻資料中の外来語の抽出・分析ともに順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
海外調査は、台湾、中国、イタリアを予定している。東西文献の外来語の抽出作業および『書記典範』『珍貴の書』の訳註を継続して進めるほか、『集史』、『農書』等の中国関連の記述の訳註も開始する。ユーラシア史、東西交流の理解に不可欠な各種言語の外交文書・モンゴル王族の命令書の分析も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
海外調査、収集した文献の画像のカラー焼き付け、簡易製本および関連の文献資料の購入に重点的に配分する。
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