研究課題/領域番号 |
24520393
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岡 真理 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (30315965)
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研究分担者 |
林 佳世子 東京外国語大学, その他部局等, 教授 (30208615)
藤元 優子 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (40152590)
勝田 茂 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (90252733)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 文学 / 中東 / 祖国 / 表象 / イスラーム |
研究概要 |
本研究は「トルコ文学」「イラン文学」といった従来的な一国文学ないし「ペルシア文学」「アラブ文学」といった一言語文学の枠を超え、広く「中東現代文学」という視野に立ち、「ワタン(祖国)」との連関から中東地域の人間と社会を考察することを主眼とする。専門言語ならびに対象地域を異にする研究者による共同研究のため、初年度である2012年度は基盤づくりに重点を置いた。 2日にわたる研究会を年2回開催、国内の中東現代文学研究者十数名を集め、中東諸地域の現代文学作品を幅広くとりあげて議論、一国あるいは一言語に限定されない「中東現代文学」の広がりと多様性について理解を深めた。 さらに分担者・連携協力者が中心となり、20余りの文学作品を翻訳し解題を付したアンソロジー『中東現代文学選2012』(総頁数450頁)を刊行した。同文学選の刊行は、今後、研究を深めるための基盤づくりであると同時に、研究成果の社会還元の一環でもある。日本における中東現代文学の紹介はごく一部の作家に偏っており、「中東」という枠で文学作品を紹介する日本語アンソロジーは初の試みであり、その社会的意義は大きい。 広く中東文学について考察する一方、本年度はトルコ文学に焦点を当てた公開シンポジウム「現代トルコ文学の魅力 その眺望と知られざる側面」を開催した(2012年6月 30日、早稲田大学、イスラーム地域研究共催)。研究成果の社会還元の一環であるとともに、20世紀前半から現代にいたるトルコの主要な作家、作品に関する専門的知見に触れることで、「中東現代文学」に関する各々の視野を広げ、認識を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究の基盤づくりのため、専門地域や対象言語の枠を超えた中東現代文学研究者の組織化が初年度の目標であったが、当初の計画通り、年2回、研究会を開催、毎回、国内の中東現代文学研究者十数名が集まり、中東諸地域の多様な文学作品について研究発表を行い、考察を深めることができた。 トルコ文学に焦点を当てた公開シンポジウムの開催は、本プロジェクトの進展という意味でも、研究成果の社会還元という意味でも、大きな意義があった。 さらに本年度は、研究会メンバーが中心となって、中東の現代文学20作品余りを翻訳、解題を付した『中東現代文学選2012』(総頁数450頁)を刊行できたことは、予想以上の成果と言える。同文学選の刊行は、今後、本研究プロジェクトを進める上での基盤的テクストとなると同時に、研究成果の社会還元としても際立った意義を有するものとして大いに評価できる。 また研究代表者である岡真理が10月にはアジア中東学会連盟大会(韓国釜山)に、11月には北米中東学会(合衆国デンバー、合衆国)に参加、韓国アラブ言語学・文学学会等をはじめ国外の中東文学研究者と交流を深めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度同様、研究会を活動の中心に据え、2日にわたる研究会を年2回開催、可能な限り多様な中東現代文学の作品をとりあげ、そのワタン表象を検討する。プロジェクト2年目となる今年度は、比較研究の観点から、「中東文学」プロパーの作品にとどまらず、欧米の中東移民による欧米の言語で書かれたテクストや、「中東」以外のイスラーム世界の文学作品、また、ポストコロニアルのプロブレマティクを共有する他地域、他言語の文学作品も採りあげ、個別具体的なテクストについて、さらに緻密な考察・分析を展開する。
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次年度の研究費の使用計画 |
『文学選』の印刷が年度をまたいだため、次年度使用額は同印刷代に充当する。初年度同様、年2回の研究会および公開シンポジウムを開催するほか、資料収集および海外調査渡航費に充てる予定である。
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