研究課題/領域番号 |
24520396
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高橋 文治 大阪大学, 文学研究科, 教授 (00154857)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 祭祀演劇 / 宗族 / 壁画墓 / 戯曲文物 / 元典章 / 廟制 / 神話 |
研究概要 |
本研究課題は、中国における祭祀と文学の関係を、主に宋金元期の墳墓、法制史料、戯曲資料、祠廟史料、宗教史料等を用いて明らかにしようとするものであり、平成24年度は以下の活動を展開して、それぞれに一定の成果を蓄積し得た。 1.法制史料の研究――難解で知られる『元典章』の関連部分「礼部3」について、その訳注を作成し、宋金元の葬送についての法規定、ならびにその実態をほぼ明らかにした。また、相続や分家の実態を明らかにするため、『元典章』「刑部19」についても訳注作業を実施し、ほぼ完成した。ここで得られた成果は将来刊行予定である。 2.戯曲資料の研究――平成24年度は主に南戯『琵琶記』と元刊雑劇『張千替殺妻』劇、同『焚兒救母』劇の研究を行い、その訳注をある程度蓄積した。また、これとは別に、宗廟祭祀において上演されたと推測される孝子故事関係の戯曲数種を調査し、関連する文献資料・絵画資料を収集・整理した。 3.「廟祭」の研究――「廟祭」は本研究の副次的な主題であるが、平成24年度についてはこの「廟祭」を特に集中的に取り上げ、廟制の歴史的変遷、廟制の変化にともなう神話の解体、ならびに、文学へのその反映等を調査し、関連資料の収集と整理、論文執筆を行った。廟制の変化の根底には歴代の政権の「世界観」「政治思想」の変化があり、そうした変化が「廟祭」のみならず「宗廟祭祀」にも多大な影響を与えたことは言うまでもない。また、この研究の成果の一部を「孤山を論じて古楽府に及ぶ」として発表した。 4.墳墓についての研究――宋金元期の墳墓に関わる考古学的発掘調査記録を収集し整理した。また、墳墓から出土する墓誌、買地券等文字資料の録文も作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題は、中国における祭祀と文学の関係を、主に宋金元期の墳墓、法制史料、戯曲資料、祠廟史料、宗教史料等を用いて明らかにしようとするものである。平成24年度は、実質的にはきわめて順調に研究活動を展開したといえるが、それらは法制史料や戯曲資料、祠廟史料、宗教史料等に関わる研究活動であり、本研究の最も中心的な課題である宋金元期の墳墓の実地調査については、諸般の事情により、これをあまり実施することができなかった。その点で、本研究課題は「(3)やや遅れている」と評価せざるを得ない。ただし、他の方面での研究は、これを当初の研究計画以上に実施することが出来たと評価することが出来る。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、中国における祭祀と文学の関係を、主に宋金元期の墳墓、法制史料、戯曲資料、祠廟史料、宗教史料等を用いて明らかにしようとするものである。宋金元期の墳墓を実地に調査することは、本研究の最も重要で中心的な課題であるが、「現在までの達成度」において報告したように、宋金元期の墳墓の実地調査については、平成24年度はこれをあまり実施することが出来ず、また、他の方面での研究においては、これを当初の研究計画以上に実施することが出来た。したがって今後は、平成24年度に調査することが出来なかった地域をも含めて、先ず中華人民共和国の山西省、河南省、甘肅省等に出張し、当該の地域に残存する宋金元期の墳墓を実地に調査・見聞する。 一方、法制史料、戯曲資料、祠廟史料、宗教史料等に関わる研究は、平成24年度において、当初の見込みよりもはるかに順調に進展しているので、法制史料については『通政條格』「戸部」を、戯曲資料については元刊雑劇『看銭奴』等を、それぞれ調査対象とし、訳注等を作成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費に関わる未使用分はすべて、中華人民共和国に出張予定でありながらそれを見合わせたことによって生まれたものであり、また、その出張とはすべて、考古学研究所所管の墳墓を調査することが当初の目的であった。墳墓の実地調査については、今後も考古学研究所に再申請することが可能である。したがって、平成24年度未使用分の旅費400,430円については平成25年度の旅費に加え、当初実施計画にしたがってこれを執行するものとする。 その他、平成25年度の研究実施計画については、上記の点以外に当初実施計画に変更はない。
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