研究課題/領域番号 |
24520398
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
佐藤 大志 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (90309625)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 楽府 / 中国中世文学 / 楽府文学史 |
研究概要 |
(1)楽府・楽府詩に関する言説の収集 本年度は、南北朝隋唐期の文献における楽府・楽府詩に関する言説の収集を行い、その分類整理を行った。具体的には『漢書』から『新唐書』に至るまでの歴代の史書、『文選』『先秦漢魏晋南北朝詩』『全上古秦漢三国六朝文』また『藝文類聚』『初学記』『北堂書鈔』の類書が収める唐以前の詩文中から楽府・楽府詩に言及する箇所を抽出し、これを内容ごとに分類した。これは楽府に関する言説の状況を考察する基礎資料であり、次年度以降はこの基礎資料を基に研究の目的である南北朝から隋唐に至る楽府の言説状況と楽府の史的展開を明らかにすることとする。 (3)楽府詩の創作面・表現面からの研究 楽府詩の創作面・表現面からの研究として、「折楊柳」という楽府題を具体的な素材として、その六朝から唐代への展開を分析・考察した。従来の研究では「折楊柳」は別れの場で楊柳を手折って相手に贈る風習に基づくとされていたが、唐以前の詩文にはそのような風習に基づく表現は現れない。本研究では以上の点を明らかにしたうえで、更に楊柳を手折る風習は、中唐期に至って普遍的に詩文に現れることを確認できた。今後は、楽府詩の史的展開とも関連させたうえで、なぜ中唐期以降にそのような変化が現れたのかを考察する予定である。 (4)楽府の制度的側面の研究 楽府の制度的側面においては、『宋書』楽志と『隋書』音楽志の構造から、雅楽及び俗楽に対する両書の認識とその差異を読みとることを試みた。この両書の構造の差異については、引き続き『旧唐書』音楽志における雅楽・俗楽の認識と比較することによって、南北朝から隋唐に至る楽府の認識とその変遷について考察を深める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画のうち、(1)楽府・楽府詩に関する言説の収集、(3)楽府詩の創作面・表現面からの研究、(4)楽府の制度的側面の研究は予定どおりに順調に進展している。ただし、(2)南北朝楽府関係資料の収集と整理については、本年度は予定どおりにすすんでおらず、次年度以降に課題を持ち越すこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
(1)楽府・楽府詩に関する言説の収集 唐代の詩文を対象として楽府に関する言説資料の収集を行う。 (2)南北朝楽府関係資料の収集と整理 類書に引用される関係資料の収集・整理を行う。 (3)楽府詩の創作面・表現面からの研究 唐代の「折楊柳」を中心としてその変遷の過程を整理し、変容の理由を明らかにする。楽府詩の史的展開とも関連させたうえで、なぜ中唐期以降にそのような変化が現れたのかを明らかにする。 (4)楽府の制度的側面の研究 『旧唐書』音楽志の読解を行い、雅楽・俗楽に対する認識について考察を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費は、データベースの購入及び情報機器の更新やメンテナンスの費用として使用する。 旅費は、文献、資料の収集のため学外の図書館や研究期間に出張するため、また本研究に関わる共同研究会に出席するために使用を予定している。謝金は、「楽府」に関する言説資料の入力のために使用する。その他として、資料の複写(学外文献複写を含む)や資料公表のためにかかる費用として使用する予定である。
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