研究課題/領域番号 |
24520401
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
竹村 則行 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 教授 (60117158)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 孔子 / 聖蹟図 / 近世中国 / 日本江戸 / 李氏朝鮮 / 北京大学図書館 / 佐賀多久廟山文庫 |
研究概要 |
申請者は初年度『聖蹟図』の資料収集、学会や研究誌での口頭、論文発表に努めた。資料収集については東京国会図書館・国立公文書館(2013年2月)、佐賀多久市廟山文庫(2012年8月)、中国北京市北京大学図書館(2012年9月)、韓国ソウル市国立中央博物館・成均館大学図書館博物館(2013年1月)等の各地の大学や博物館等での実地調査を行い、予想を越える収穫があった。学会等での研究発表については九州中国学会(2012年5月、福岡教育大)、北京大学中文系での講演会(2012年9月)等を実施した。特に韓国ソウル調査では彩色『聖蹟図』の貴重資料を実見できた。 これらを基に、現在以下2編の研究論文を刊行中である。「林羅山『聖蹟図説諺解』に佚存する明・鄧ケイの跋について」(『九州中国学会報』第51巻、1-15頁) / 「近世中国、朝鮮、日本伝播的《孔子聖迹図》:版本初探」(《国際漢学研究通訊》2013年第7期、2013年8月。中国文)。以上の研究成果の上に立ち、現在は2013年度に計画中の『和版聖蹟図彙編』(仮称)の編集に着手している。 以下本研究での特筆すべき成果を3点挙げる。 ①北京大学図書館蔵の康熙25年序刊『聖蹟図』が、顧ゲン『聖蹟図』の底本であることの発見。このことは学界ではまだ言及がなく、近く論文に纏める予定である。 ②北京大学中文系における『聖蹟図』に関する学術報告、及びそれを基にした北京大学学術誌への登載。2012年9月19日、申請者は北京大学中文系において教員院生を前に「近世中国・朝鮮・日本に伝播した『孔子聖蹟図』」と題して学術報告を行った。鋭い質問も提起され、有益な時間と経験であった。この発表稿(中国文)は北京大の《国際漢学研究通訊》に載せるべく現在編集中である。 ③韓国ソウル市での『聖蹟図』調査が実現したこと。当初計画にはなかったが、大きな研究成果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
①申請以前において『聖蹟図』関係資料を既に相当収集していたこと。 ②北京大学図書館での資料調査に杜暁勤教授の適切で熱心な助力を得たこと。 ③韓国ソウル市での調査訪問について関係者の懇切な助力を得たこと。 ④国会図書館・国立公文書館・佐賀多久廟山文庫等における資料調査において、閲覧や覆製等に支障が無かったこと。 以上挙げた諸々の理由により、中国・朝鮮・日本に伝播した『聖蹟図』の調査は、幸いに当初計画を半年~1年ほど前倒しして進捗している。2年目については、当初3年目に計画していた『和版聖蹟図彙編』の編集が可能になった。現在鋭意準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進については、資料収集や学会・研究誌等での口頭・論文発表を継続するほか、特に江戸期日本において編集刊行された『聖蹟図』の版本、翻案作品等を集成して『和版聖蹟図彙編』(仮題)と第して一本に纏めたい。この種の本は日本・中国・韓国には無く、関連資料を集成したものとして学術価値が高く、学界の注目を集めることは間違いない。ただ次項に述べる研究費の問題があるので、今回は印刷費として使用できる範囲で『和版聖蹟図彙編』(仮題)(稿本)程度に止め、正式な刊行は次の機会を待ちたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
前項に述べたように、『聖蹟図』に関連する資料の収集や学会・研究誌等での口頭・論文発表に必要な費用は計上する。 次年度については、特に『和版聖蹟図彙編』(仮題)(稿本)の編集発行を精力的に進捗させたいので、そのために必要な印刷費等をこのために集中して計上する予定である。
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