本研究は、「満洲国」時期の文学と芸術諸分野(映画、演劇、音楽など)を研究対象とし、その全体的な状況や基礎的な事実について、総体的に把握することに努め、さらに両者の関連性について総合的に解明することを目指しております。全体構想として、文学と芸術諸分野に関係する執政者側の政策や方針、法律や条例、また組織や団体、諸活動などの基礎的な事実を、先行研究や文献調査などにより明らかにするとともに体系的にまとめ、「満洲国」における文学と芸術の関係性、および両者のはたした役割について総合的に考察しようとするものです。 本来、平成26年度までに研究を完成させる予定でしたが、調査対象となる新聞、雑誌、書籍、マイクロフィルムの量が膨大であるため、加えて、中国国家図書館および文献マイクロフィルムセンターが改修工事のため、資料調査作業が大幅に遅れました。そのため、平成27年度まで一年間研究期間を引き延ばしました。 最終年度にあたり、これまでの調査成果を整理しつつ、それにふまえて、目下研究の集成として関連の資料集や論考集の執筆や刊行に向けての準備作業に取り組んでいるところです。一般公開までにしばらく時間がかかる見込みですが、本研究が完成した場合の効果や意義は以下のように予想しています。 日本の植民地支配下地域の文学・文化研究の全体において、立ち後れている「満洲」地域の研究状況を改善し、研究を促進させるための前提となる基礎的な史料や先行研究として寄与できます。また、これまでの研究では個別な作家論や作品論に限るものは多いが、文学をめぐる環境を俯瞰的にとらえて、文学と周辺芸術諸分野との関連性について一部明からにされることです。このことにより、日中両国の文化史研究に新たな視点や情報を提示することになると考えられます。
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