研究課題/領域番号 |
24520403
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
谷口 幸代 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 准教授 (50326162)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 日本文学 / ドイツ文学 / 演劇 |
研究概要 |
当該年度に開催された多和田葉子の文学を原作とした公演について、可能な限り実際に足を運び、出演者、演出、会場など基本情報を収集し、原作との比較検討を進めた。具体的には、多和田作品を継続的に演劇化している劇団らせん舘の日独両国での公演、すなわち日本公演では「雪の練習生」の第二部を中心としたオペレッタ「白熊のトスカ」(西宮市、兵庫県立芸術文化センター)、ドイツ公演では「旅をする裸の眼」の第7章、8章の朗読劇(ベルリン、ブレヒトハウス)の実地調査を行った。劇団らせん舘に特にオペレッタや多声的な朗読劇という演出をめぐってインタビューを行った他、「旅をする裸の眼」の公演時には、上演後に実施された、原作者、出演者、演出者、観客全員によるディスカッションにも参加した。 また多和田葉子本人の朗読会、パフォーマンスに関しても同様に実地調査を進めた。こちらでは、朗読会(ベルリン、Thaer書店)、「Tai-Chi-Text-Performance」と題された、Pia Bitschの太極拳と朗読のコラボレーションのパフォーマンス(ベルリン、太極拳・気功教室)、ジャズピアニスト高瀬アキとの恒例のコラボレーション「変身」(東京、シアターカイ)である。 以上により収集されたデータを整理し、多和田葉子の文学をめぐる公演年表の作成につとめた。その成果の一端は講談社文芸文庫『飛魂』所集の「多和田葉子年譜」に活かした他、朗読会や演劇が盛んなドイツ文化を背景にこれらの具体的事例をとらえ直して、具体的事例として戯曲「Pulverschrift Berlin」とその上演について考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日独両国において開催された、多和田文学を原作とした演劇の公演、並びに多和田本人の朗読会やパフォーマンスに実際に足を運び、データを収集したこと、多和田本人や劇団にインタビューを実施することができたこと、それらに加えて、作成を進めている年譜の成果の一部を公開できたこと、以上から順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今度も継続して多和田文学を原作とした演劇等の公演と多和田自身が出演する朗読会やパフォーマンスの公演の実地調査を進めながら、蓄積された材料をもとに、『雪の練習生』等を具体的に取り上げて、多和田作品に内在する演劇性の考察をより深める方向で考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定では、エディンバラ・フィスティバルでの劇団らせん舘による多和田作品の演劇化についても調査を行う予定であったが、同劇団の事情により公演がキャンセルされたため、調査の実施を見送ることになった。それにより使用金額の変更が生じた。次年度は、その分の助成金を含めて、日本、ドイツ以外の国での調査へと視野を広げることを計画している。
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