研究課題/領域番号 |
24520403
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
谷口 幸代 お茶の水女子大学, 人間文化創成科学研究科, 准教授 (50326162)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 日本文学 / ドイツ文学 / 越境文学 / 演劇 |
研究実績の概要 |
多和田葉子の文学を原作とした演劇、並びに多和田本人によるパフォーマンスに関する調査を継続した。前者では、劇団らせん舘の嶋田三朗氏の講演「日常から演劇へ、演劇から日常へ―近松門左衛門の浄瑠璃、秋浜悟史作「風に咲く」の関西弁、多和田葉子作「サンチョ•パンサ」の現代日本語•ドイツ語•スペイン語の演劇を演出して―」における実演(平成26年8月29日、第14回ヨーロッパ日本研究協会国際会議・第18回ヨーロッパ日本語教育シンポジウム、リュブリャナ大学)、「カイ・バベル・アンサンブル公演『バベルクラブ定例集会』」(構成・演出:古関すま子、平成27年1月18日、シアターカイ)、「夕陽の昇るとき~STILL FUKUSHIMA~」(劇団らせん舘、同年3月20日、越木岩公民館公演、同21日、鳴尾公民館)、後者では多和田と高瀬アキとのパフォーマンス公演「白拍子vs変拍子」(平成26年11月12日、早稲田大学、同14日、シアターカイ)を調査した。以上の調査結果を加えて作成中のデータベースを更新した。 研究成果の発信として、国際日本学シンポジウム「越境する文学の諸相~ことばを越える・ジャンルを越える~」(同年7月6日、お茶の水女子大学比較日本学教育研究センター)を企画した。高橋睦郎氏による東日本大震災をめぐる詩、短歌、俳句の可能性に関する講演、日中バイリンガル詩人・田原氏によるバイリンガル作家の再定義、稲賀繁美氏による翻訳という営為の捉え方の刷新、郭南燕氏による日本語を母語としない書き手による日本語文学に関する報告、以上のようなことばとジャンルを越える様々な文学営為の中で「夕陽の昇るとき~STILL FUKUSHIMA~」がもつ現代的意義について報告し、討議した。さらにシンポジウムの模様を『比較日本学教育研究センター研究年報』11号で誌上再現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ベルリンでの「夕陽の昇るとき~STILL FUKUSHIMA~」のドイツ語バージョン(“STILL FUKUSHIMA:Wenn die Abendsonne aufgeht”)の公演(劇団らせん舘、平成26年6月、12月)の調査は、この戯曲とその演劇化を考察するにあたって、日独両バージョンの比較検討のため是非とも実施したかったが、学事日程の関係で調査を見送らざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
多和田葉子の文学を原作とした演劇、並びに多和田本人によるパフォーマンスに関する継続調査に従事するとともに、“STILL FUKUSHIMA:Wenn die Abendsonne aufgeht”について多和田と劇団らせん舘へのインタビュー調査を試みたい。また国際日本学シンポジウム「越境する文学の諸相~ことばを越える・ジャンルを越える~」(上記)の成果をもとに、テーマを多和田文学にしぼって新たな国際シンポジウムを開催するための準備に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
【現在までの達成度】の欄に記したように、“STILL FUKUSHIMA:Wenn die Abendsonne aufgeht”のドイツ公演の調査を見送ったことに加えて、第14回ヨーロッパ日本研究協会国際会議も勤務校の入試関連の会議が入ったために途中からの参加となったことから、使用金額の予定に変更が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
年度は、海外での公演の調査に関しては、島田氏の講演の中の一部実演のみにとどまった。今年度は“STILL FUKUSHIMA:Wenn die Abendsonne aufgeht”や“Till”のドイツ公演を候補に、この点の補強につとめたい。
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